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平成の事件ジャーナリズム史

元社会部長の小川一が個人的体験を交えながら「平成の事件ジャーナリズム史」を振り返ります。

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(5)片山隼くん交通死事件 被害者たちの声、大きな力に

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事故の初報は、夕刊の社会面の載った小さなベタ記事でした
事故の初報は、夕刊の社会面の載った小さなベタ記事でした

 東京都世田谷区の片山隼君(当時8歳)がダンプカーにひき逃げされて死亡したのは、1997年11月28日朝のことでした。この事故を伝える毎日新聞の記事は夕刊社会面ベタ21行の小さなものでした。痛ましい事故ではありますが、交通事故を伝える新聞の扱いとすれば平均的なものだったと言えます。そして、隼君の死も、当時は年間1万件近くも起きる他の交通死亡事故と同様、「悲しみ」を報道で共有することなく、忘れさられてしまう可能性が高かったのです。

 ところが、翌98年1月、隼くんの父親が東京地検を訪れ、現行犯逮捕された運転手の処分を聞いたことから事態は変わり始めます。運転手は10日後に釈放され、20日後に不起訴になっていました。しかし、応対した事務官は「不起訴処分」という結果だけを伝え、「理由を教える義務はない」と言ったのでした。

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