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社説

米大統領が非常事態宣言へ 職権乱用で壁を造るのか

 今の米国のどこに非常事態があるのかと、首をひねるばかりだ。

     トランプ大統領は議会が合意した予算案に署名して政府機関の一部閉鎖を回避する意向を示す一方、メキシコ国境に壁を建設するため国家非常事態を宣言すると述べた。

     トランプ氏の最大の公約とも言える「壁」の建設について、予算案は「障壁」などの設置用に13億ドル余りを盛り込んだが、57億ドルを要求してきた同氏は満足しなかった。

     そこで国内法(国家非常事態法)に基づき大統領権限で建設費用を積み増そうというのだが、この辺は姑息(こそく)で横暴とのそしりは免れまい。

     予算をめぐる権限は憲法上、議会にある。与野党の合意を無視して強権を発動するのは民主主義のルールに反する。しかも理由が解せない。

     非常事態宣言は2001年の米同時多発テロや09年の新型インフルエンザ流行時にも出された。宣言自体は珍しくないが、「不法移民や麻薬の流入抑止」(トランプ氏)という理由づけに、緊急性と正当性があるとは思えない。

     野党・民主党は「メキシコ国境で起きていることは非常事態ではない」として大統領の職権乱用を指摘した。こちらの意見の方が常識的だ。

     来年の大統領選への思惑もあろうが、なぜそんなに「壁」にこだわるのか。トランプ氏の排外主義的な傾向が改めて気になる。

     米国社会には人種や宗教、性別などの違いを超えて一体化を図る動きと同時に、異質なものを排除する動きもある。後者には黒人や女性に対する蔑視、イスラム教徒への偏見・差別などが含まれよう。

     トランプ氏は後者の傾向が強く、特に移民への態度は厳しい。「壁」はトランプ主義の象徴と言えるが、移民とともに繁栄を築いた米国が今、排除の論理で突き進むことこそ「非常事態」ではないのだろうか。

     米国の盟友イスラエルは、パレスチナ人居住区を隔離する分離壁を造って国際司法裁などから違法性を指摘された。トランプ氏の「壁」には同種の違法性はないにせよ、他者を排除する息苦しさは共通している。

     欧州でも排外的なポピュリズムが目につく中、米国が「壁」の建設へ向かう影響は小さくない。

     トランプ氏の再考を求めたい。

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