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社説

新出生前診断の条件緩和 安易な実施拡大は禁物だ

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 妊婦の血液を検査して胎児にダウン症候群などがあるかどうかを調べる「新型出生前診断(NIPT)」の実施が大幅に拡大されようとしている。日本産科婦人科学会がこれまで限定してきた実施施設の要件を緩和しようとしているからだ。

 手軽に受けられる検査だけに、十分なカウンセリングがなされなければ人工妊娠中絶をいたずらに増やしてしまうだろう。その体制が保証されているのか、懸念は残されている。関係学会からの批判もある。拡大には慎重であるべきだ。

 NIPTは妊婦の血液に含まれる胎児のDNAを解析し、ダウン症など3種類の染色体異常があるかどうかを調べる検査だ。高齢妊娠などを対象に日本では2013年から「臨床研究」として実施されてきた。結果が「陽性」と出ても、胎児に異常がない場合もあり、羊水を使った正確な診断が必要となる。

 臨床研究には、産婦人科医と小児科医が常勤する医療機関で、遺伝の専門外来を設けて実施するといった条件が課せられた。要件が緩和されるとカウンセリングの研修を受けた産婦人科医がいれば検査を実施できるようになる。

 気になるのは、これまでの5年半で6万人以上が検査を受け、「陽性」が確定した人の9割以上が人工妊娠中絶を選んだことだ。

 もちろんカップルの選択は尊重しなくてはならない。ただ、ダウン症などの赤ちゃんが生まれた場合の支援体制や、地域でどのように生活しているかなどについて十分に説明を受けたか。中絶を選んだ人と出産を選んだ人の違いはなにか、といった背景を徹底分析し、カウンセリングに生かす必要があるはずだ。

 出産の高齢化を背景に出生前診断の実施は急増している。施設要件が緩和されると開業医でも提供され、「誰もが受ける検査」と妊婦が思い込む心配がある。専門的カウンセリングを受けず、胎児に異常がなくても中絶するケースの増加も懸念される。ひいては、障害を持つ人を差別する風潮を助長する恐れがある。

 胎児の診断技術が進んでも障害を持つ人がいなくなるわけではない。誰もが障害を持つ可能性のあることを忘れず、障害者や家族を支える体制整備を進めることが大事だ。

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