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平成の事件ジャーナリズム史

元社会部長の小川一が個人的体験を交えながら「平成の事件ジャーナリズム史」を振り返ります。

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(6)上智大生殺害・放火事件、世田谷一家殺人事件 そして殺人の時効廃止へ

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毎日新聞のキャンペーン「忘れない」の紙面です。上智大生殺害・放火事件の取材が、殺人罪時効廃止への動きにつながっていきました。
毎日新聞のキャンペーン「忘れない」の紙面です。上智大生殺害・放火事件の取材が、殺人罪時効廃止への動きにつながっていきました。

 東京都葛飾区の民家で火災が起き、焼け跡から上智大4年の女子大生の遺体が見つかったのは1996年9月9日のことでした。遺体は粘着テープなどで縛られ、首を鋭利な刃物で刺されていました。女子大生は2日後に海外留学する予定でした。警視庁は殺人放火事件として捜査本部を設置しました。

 毎日新聞は2008年5月から「忘れない~『未解決』を歩く」と題し、未解決事件を改めて取材し、被害者遺族の思いを伝えるキャンペーンを始めました。殺害された上智大生の父、小林賢二さんを取り上げたのは、08年7月、事件発生からまもなく12年になるころでした。捜査は難航し、犯人の姿はいっこうに見えてきません。このままでは殺人罪の時効15年がやってきます。いら立ちを覚えていた小林さんは、キャンペーンの一環として毎日新聞が行った世論調査の結果を見て驚きます。「時効をなくすべきだ」が77%にも上っていたのでした。小林さんは意を決しました。娘の命日である9月9日、時効を撤廃してほしい」と初めてマスコミの前で訴えたのでした。

 遺族たちの思いを受け止めながら、毎日新聞は、時効をめぐるさまざまな課題や議論を報道していきました。全国の総支局を通じて、殺人事件の時効成立状況に関する初めての調査も行いました。08年からさかのぼる5年間に、殺人事件の時効が241件あったことがわかりました。多くの事件が世間から忘れられながら時効を迎えている問題点を指摘したのです。

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