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第94回センバツ高校野球

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32番目の心意気

’19熊本西/2 創意工夫 練習は時間との闘い /熊本

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守備練習で三塁線への打球に腕を伸ばす熊本西の野田侑選手(左)=熊本市西区の熊本西高校で、清水晃平撮影 拡大
守備練習で三塁線への打球に腕を伸ばす熊本西の野田侑選手(左)=熊本市西区の熊本西高校で、清水晃平撮影

 <第91回選抜高校野球>

 西の空があかね色に染まる熊本西グラウンド。元村崚吾副部長(24)が内野を守る選手らに速射砲のようなノックを浴びせる傍らで、マイクとストップウオッチを手にした女子マネジャーらが淡々と計測タイムを読み上げていた。「3・9秒」「4・2秒」……。

 熊本西の「時間制限ノック」だ。打者が打って一塁に駆け込むまでの時間は俊足の選手で3・8~3・9秒とされる。そのため元村副部長の打球を捕って送球が一塁手のミットに収まるまでを4秒以内に完結させるのが制限時間ノックのルール。選手らは今のプレーで打者走者をアウトにできるのか、常に実戦を意識しながら練習できる。

 選手たちに時間を意識させる最大の狙いは練習の効率アップだ。熊本西は学校の規則で夏時間(2~11月)は完全下校が午後7時半、冬時間(11月~翌年2月)は午後6時半までと決められている。そのため平日の練習は曜日によって夏場でも2~3時間、冬場は1~2時間しか取れない。練習は時間との闘いになる。

 平日の練習はノックを1回15分、フリー打撃を1人3分半などと細かく設定して次々にメニューを切り替える。「時間に限りがあるからこそ選手は一球の重み、野球ができる喜びを感じることができる。それは大事な場面で武器になる」。決して目いっぱい練習できる環境ではないが、横手文彦監督(43)は前向きに受け止める。

 現在のチームには効率アップの意識が浸透している。「終業後、グラウンドまで走ってくるようになった」と上田謙吾部長(30)。練習中も「早く構えろ」「急ごう」と互いに声を声を掛け合う。限られた時間を有効に使ってきたことが昨秋の九州大会8強につながった。

 2月の学年末考査中は勉強時間も確保しなければならなかった。そこで選手らは選抜でベンチ入りの可能性がある「選考メンバー」と「非選考メンバー」に分かれ、選考メンバーだけが1時間半ほど練習。非選考メンバーは教室で自習し、練習後のグラウンド整備を引き受けた。おかげで選考メンバーも下校前に1時間自習できた。

 「高校野球の模範的な姿」とされる21世紀枠の選考基準の一つに、創意工夫した練習で成果を上げていることが挙げられる。熊本西に課されている時間的制約は今日、多くの高校が抱える悩みだ。熊本西のような学校が甲子園に出て、大舞台で練習の成果を披露できれば全国の高校の励みになる。それこそが21世紀枠の意義だ。(次回21日に掲載します)

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