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嘉手納基地を走って見えた 沖縄県民と米軍との「違う景色」 おきなわマラソン完走記

完走を目指し、スタートするランナーたち=17日午前9時すぎ、沖縄市の県総合運動公園前で、琉球新報社提供

 沖縄県中部の沖縄市やうるま市などを走る「2019おきなわマラソン」が17日に開催された。途切れない地元の人たちの応援に支えられ、フルマラソンは1万430人が走り抜けた。この大会の目玉は、米軍嘉手納飛行場の中を走れること。「基地を沖縄の文化の一つとして見てもらおう」とコースが設定され、アメリカ流のおもてなしが人気だという。マラソンに参加すると、沖縄の「違う景色」が見えてきた。【中嶋真希】

 毎年2月に行われるおきなわマラソンは、沖縄市にある県総合運動公園が発着点。世界遺産に登録されている「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の一つ、うるま市の勝連(かつれん)城跡の前や、嘉手納町、沖縄市、北谷町にまたがる嘉手納飛行場などを通る。平たんなのは最初の10キロのみで、アップダウンが激しいことで有名だ。完走率が80%を切ることも多いが、今年は涼しかったこともあり、81.14%が完走した。

 沖縄のマラソンは、大会本部が設置する公設エイドのほかに、地域の人たちが食べ物や飲み物を配る私設エイドが充実しているのが特徴。午前9時にスタートすると、すぐに沿道の応援が始まり、数キロ進んだところで塩あめなどのエイドが始まった。応援の規模もケタ違い。「エイサー」などの伝統芸能やバンド演奏、100人を超えるであろう高校生たちの学校前にずらりと並んでの応援など、熱い声援を受けて順調に前に進んだ。

途切れない応援 日本語のプラカードも

嘉手納飛行場内で、「ちばりよー」のプラカードで応援する人たち=中嶋真希撮影

 嘉手納飛行場に入るのは、28.9キロ地点。基地の第2ゲートに入ってから第5ゲートを出るまでの約3キロを走る。基地に入る前は、苦しいアップダウンが続いていた。減速するランナーたちに、沿道から「もうすぐ基地だよ」という声が聞こえた。それだけ、基地内のコースを楽しみにしているランナーが多いのだろう。坂を上りきると、嘉手納飛行場のゲートが見えてきた。

 今回、記者が「基地の中を取材したい」と申し込んだところ、空軍のマシュー・フレデリックス2等空曹(31)が基地内を走って同行してくれることになった。ゲート前で待っていてくれたフレデリックスさんと合流して中に入ると、早速、空軍の家族の子供たちが「エイサー」で迎え入れてくれた。

 少し走ると、遠くから「Good job」「Let's go!」「ガンバレ!」という大きな声が聞こえてきた。米兵やその家族が、力強いハイタッチでランナーを盛り上げていた。応援だけでなく、給水やおかしのエイドもあり、カラフルなクマ形のグミが配られていたのがアメリカらしい。日本ではなかなか見かけない大型犬たちが沿道にいるのも楽しい。軍のカートに乗ってランナーに手を振って回る米兵や、「ちばりよー(沖縄の方言で『がんばれ』)」と書かれたプラカードを持つ人もいた。笑顔の応援に、思わずペースが上がる。

 ここまで走ってきて、コース上では米軍関係者かと思われるランナーの姿も見かけてきた。「さっき、何人か軍の仲間がランナーとして走っていたのを見ました。ここでは、みんな体を動かすのが好き。私もよく5~10キロ、基地の周辺を走ります」とフレデリックスさん。「あれは基地の高校ですよ」などと案内してもらいながら、軽快に進む。

嘉手納飛行場の第5ゲート=中嶋真希撮影

 20分ほどで第5ゲートに到着。フレデリックスさんと握手で別れ、残り約10キロ。その後も上りと下りが続き、脚が止まりそうになる場面もあったが、アーサー汁(あおさ汁)や乾燥梅をもらったり、子供たちに冷却スプレーをかけてもらったりしながら、なんとか進む。無事にフィニッシュすることができた。

「基地文化を見てもらおう」と設定

 1993年に創立したおきなわマラソン。なぜ、米軍基地の中を走ることになったのか。大会を主催する団体の一つ、中部広域市町村圏事務組合の座喜味保事務局長(57)は、「沖縄県中部にはこれだけ多くの基地があるということを文化の一つとして見てもらおうというねらいがあった」と振り返る。警備の課題などがあったが、米軍側は「親善の機会になる」と捉えて了承を得られたという。

 「基地を容認することになるのでは」という声もあったが、沖縄の現状を内外に発信していこうという目的もあった。「観光客だけでなく、沖縄の人たちにとっても、基地内を走るのは貴重な機会。応援のノリがいいと好評です」と座喜味さんが言うように、今ではすっかり名物コースになった。

「反対」だけど「否定」じゃない

 沖縄では、24日に辺野古移設を問う県民投票を控えている。共同通信社が16、17日に実施した世論調査では、投票に行くと答えた人のうち67.6%が「反対」と挙げた。一方で、おきなわマラソンのような日米親善の機会も多い。マラソンの間も、基地内だけではなく、基地周辺でも米軍関係者と地元の人たちが一緒に応援するのを何度も見かけた。

 記者はこれまで、沖縄の人たちから「これ以上基地は増やしてほしくないが、基地を否定しているわけではない」という複雑な思いを聞いてきた。基地で働く人たちと地元の人たちがお互いを尊重し合ってきたことが伝わってきたおきなわマラソン。基地に「賛成」か「反対」かという結果だけでは見えない、沖縄の違った一面がうかがい知れた。

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