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はやぶさ2試料採取の意義とは 新たな太陽系のなぞを探る「0.1グラム」

探査機はやぶさ2のサンプラーの開発に携わった橘省吾・東京大教授=東京都文京区で2018年10月、永山悦子撮影

 小惑星探査機「はやぶさ2」が22日午前、小惑星リュウグウへの着陸に挑む。リュウグウはまんべんなく岩に覆われ、着陸が非常に難しい地形。昨年10月に予定していた着陸を4カ月延期し、半径わずか3メートルの円内という狭い領域を目指すことになった。なぜそこまで難しい着陸に挑むのか。それは、太陽系の起源を探る貴重なリュウグウの物質を地球へ持ち帰るためだ。【永山悦子】

 はやぶさ2の試料採取法は、基本的に先代の探査機「はやぶさ」の方法を踏襲している。探査機の下部に筒状(長さ約1メートル、直径約20センチ)の採取装置(サンプラーホーン)がついており、この「1本脚」の先端でリュウグウの表面に触れる。はやぶさ2の開発期間が限られていたことと、表面の状況が分かっていない未知の天体へ着陸するには「1本脚」をピンポイントで接地させるのが合理的と考えられるためという。

「リュウグウの試料を分析し、太陽系の歴史をさかのぼりたい」と話す橘省吾・東京大教授=東京都文京区で2018年10月、永山悦子撮影

 ホーンの先端が接地したことが確認されると、自動的に重さ5グラムの金属製の弾丸が秒速300メートルで発射される。弾丸が小惑星表面を砕き、表面の物質の破片が飛び散る。リュウグウは重力が地球の約8万分の1と極めて小さいため、飛び散った物質は浮き上がり、そのまま探査機内のコンテナに入っていく設計だ。探査機の着陸は数秒で、すぐに上昇する。

 サンプラー開発に携わった橘省吾・東京大教授(宇宙化学)は「科学者としては、大きなものをゴロゴロ持って帰れれば一番だが、はやぶさ2はサイズや重さの制限が厳しく、その枠内でできることを考えた」と振り返る。

探査機「はやぶさ2」が試料採取のため着陸するときの想像図=池下章裕さん提供

 その結果、採取する物質の目標量は0.1グラムと多くはないものの、コンテナの密閉性をはやぶさよりも大幅に高めて、揮発性物質も地球へ持ち帰れるようにした。はやぶさでは、帰還後にコンテナ内に地球の空気が入ってしまい、イトカワ由来のガスの分析ができなかった。今回は「地球に帰ってきて100時間たっても10万分の1気圧程度しか空気が入らない」というレベルの密封度を確保し、金属の上にやわらかい金属を押しつけ、変形させて密封するという方法をとった。リュウグウの有機物が揮発した物質も分析できる可能性があるという。

 はやぶさの着陸では、弾丸がむやみに発射されないようにかけているロックが解除されず、弾丸が発射されないという結果に終わった。その教訓も踏まえ、「弾丸が発射されなかったときのために」と、ホーンの先端を内側に折り返し、表面にある1センチ未満の物質をザクッと引っかけて採取できるようにする工夫を加えた。ただし、リュウグウの表面は大きな岩や石で覆われているため、折り返しが力を発揮できるかどうかは未知数とされる。

 リュウグウの物質を持ち帰る科学的な意義については、リュウグウが炭素を多く含むC型小惑星に分類されるため、「太陽系と生命の起源を明らかにできる」と説明される。橘さんにその意味を聞くと、「小惑星は、46億年前の太陽系ができた当時の姿を残している可能性があり、私は試料の分析を通じて太陽系の時間をさかのぼりたいと考えている。物質は熱を受けると昔の情報を失ってしまう。料理も黒焦げになれば元が何だったか分からなくなるし、煮すぎると原形がなくなる。リュウグウには、そうなる前の物質が残っている可能性がある。また、リュウグウの有機物から直接生命の起源を解明することは難しいと思うが、生命が誕生した地球に対して、宇宙にある生命の材料となる物質がどのようにかかわったのかを考えるのは可能だと思う」と話した。

はやぶさ2が小惑星リュウグウに到着したことを受け記念撮影に応じる渡辺誠一郎・名古屋大教授(右から2人目)ら=相模原市中央区で2018年6月27日午後4時5分、渡部直樹撮影

 はやぶさが訪れた小惑星イトカワからは、目に見えないほど小さな微粒子(直径10~100ナノメートル)しか地球へ持ち帰ることができなかった。しかし、それを世界中の研究者たちが最新の機器を駆使して分析した結果、▽地球へ落ちてくる隕石(いんせき)が小惑星から飛んできたこと▽イトカワは小天体との衝突を繰り返していたこと▽母天体はイトカワの40倍もの大きさだったこと▽小惑星の表面が日焼けしていること▽イトカワが風化によって消滅するかもしれないこと▽イトカワの微粒子の表面に40億年以上の歴史をさかのぼることができる模様があること--などが明らかになった。

 目に見えないほどの微粒子だけであってもここまで解析することが可能であり、はやぶさ2が採取を目指す「0.1グラム」という量があれば、かなりの解析が期待できるというわけだ。

はやぶさ2の科学探査の取りまとめを担う渡辺誠一郎・名古屋大教授=兵藤公治撮影

 イトカワの試料を分析し、リュウグウの物質の分析に参加する土山明・京都大教授(鉱物学)は「隕石のように地球で手にする地球外の物質は、どの天体のどの場所から届いたものか分からないが、実際に訪れた天体から採取した試料であれば由来がはっきり分かる。これは物質の特性や意義を検討するうえで非常に重要なポイントだ。個人的には、リュウグウの物質の中に閉じ込められているかもしれない液体の水を見つけたいと考えている」と、探査天体から物質を持ち帰る意味を説明する。

 一方、はやぶさ2プロジェクトの科学探査を取りまとめる渡辺誠一郎・名古屋大教授は「今回の探査では、『小惑星の科学』ではなく『小惑星からの科学』を明らかにしたい。小惑星を知るためだけではなく、太陽系がどうやってできたのか、太陽系の初期はどんな状態だったのかといったことを読み出したいと考えている」と話す。

 はやぶさ2のリュウグウ着陸の予定時間は22日午前8時ごろ。その瞬間、弾丸は予定通りに放たれるか、リュウグウの岩の破片が浮き上がって探査機のコンテナにしまわれるか、探査機は計画通りに上昇できるか――。新たな太陽系のなぞを解く研究が実現することを期待して、見守りたい。

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