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毎日新聞
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行動が夢を叶える 信頼あっての「だめ出し」=カヌー・羽根田卓也

羽根田卓也選手=2017年10月28日、宮間俊樹撮影

 昨年はスポーツ界でのパワーハラスメントが問題となり、最近は選手とコーチとのあり方について考えています。

 18歳からスロバキアを拠点に活動している私は、日本と欧州で指導の違いを感じました。スロバキア人にとってスポーツは純粋に楽しく挑戦するものです。自らを追い詰めたり、誰かにやらされたりするものではありません。欧州での経験を踏まえ、もっと人に伝えられることがあるのではないかと考えています。

 私は日本の高校で、人生をささげる覚悟でカヌーに取り組んできました。自分を追い込む形を取ることで、さぼらないようにしていた面もあった気がします。

 18歳にして親の援助を得て知らない土地で競技をしている私を見て、スロバキアの選手から「そこまでしてスポーツをやるのか」と驚かれました。彼らにとってスポーツとは若い時に全力で取り組む活動の一つであり、人生を縛るものではありません。いい意味でいつやめてもいいぐらいドライに考えています。それでも競技に取り組む姿は、誰よりも一生懸命です。

 スロバキアのスポーツに「我慢」や「忍耐」という感覚はありません。日本で行われてきたスポーツのイメージとは大きく違います。欧州で競技をしていると、「なぜ嫌な思いをしてまでスポーツを続けなければならないのか」と思ってしまいます。

 選手とコーチは信頼関係が一番。信頼関係がなければ選手はコーチの言うことを素直に聞けないし、コーチも選手のために言うことができません。自分の欠点を指摘する「だめ出し」を受け止めるのも選手の器量だと思います。

 熱を入れすぎて手を上げてしまう指導は、もちろんなくさなければいけません。しかし、選手のために熱心に向き合う日本の指導者の姿勢は、大切な部分でもあると思っています。自分も引退して指導者になる時が来れば、スロバキアで学んだ指導法を日本になじむようにしてやりたいと考えています。トレーニングがつらいと感じてしまう押しつけの指導だけはしないようにしたいです。(あすはバドミントン・奥原希望です)(タイトルは自筆)


 Q レスリング女子の吉田沙保里さんの引退について思うことは?

勝負強さの次元違う

 A 一瞬の油断が命取りになる競技で、なぜ吉田さんはあそこまで連勝ができるのか、前から考えていました。センス、努力、勝負強さの三つが大きいと思いますが、勝負強さの次元が違います。

 東京五輪が待っていても、4年間競技を続けて世界一になることは半端なことではありません。犠牲もあるし、いろいろなことに耐える気持ちがないと続けられません。

 世界のトップで争いたい、年齢ぎりぎりまで自分の限界に挑戦したいという考えもあると思います。ただ、自分の引き際は世界で一番を目指す気力がなくなり、世界で争うことができないと感じた時だと考えています。


 ■人物略歴

羽根田卓也(はねだ・たくや)

 愛知県豊田市出身。種目はスラローム男子カナディアンシングル。五輪3大会連続出場。2016年リオ大会で日本選手初メダルとなる銅メダルを獲得。ミキハウス所属。31歳。