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岐路の風景

歴史の転換期となった文化的事象を取り上げ、現代の視点から改めてその意義を探ります。

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宗教者と大災害 「無常」の中にぬくもり、東日本大震災での実感 追悼とは愛情の継承

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東日本大震災で被災した女性からの手紙を読む鍋島直樹さん。「宗教者に役割があることを教えてもらった」と語る=神戸市中区で、花澤茂人撮影
東日本大震災で被災した女性からの手紙を読む鍋島直樹さん。「宗教者に役割があることを教えてもらった」と語る=神戸市中区で、花澤茂人撮影

 東日本大震災の発生から間もなく8年。被災地では多くのボランティアが支援活動に当たったが、その中には僧侶ら宗教者の姿もあった。被災地にあふれる苦悩や悲嘆を前に、宗教に何ができるのか。多くの命を奪った大災害は、宗教者たちが自身と向き合う転機にもなった。【花澤茂人】

 丁寧に広げた手紙を、浄土真宗本願寺派・真覚寺(神戸市中央区)の鍋島直樹住職(60)は大切そうに見つめた。龍谷大の教授でもあり、死への不安や死別の悲しみに対する仏教の救済観の研究を続けている。東日本大震災の被災地も繰り返し訪れ、遺族らと交流を続けてきた。手紙は津波で夫を亡くした宮城県気仙沼市の女性からのもの。「被災者の方たちから、宗教者に役割があることを教えてもらったのです」

 24年前の阪神大震災では鍋島さん自身が被災した。寺は塀と門が倒壊。本堂にもひびが入った。余震の恐怖におびえながら「何かできることはないか」と炊き出しなどを手伝い、避難所や仮設住宅での傾聴活動もした。だが、僧侶であることはできるだけ伏せた。「宗教者として公共空間でどう活動したらいいか、経験がなかった」と振り返る。

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