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2月
地を埋めようとするものの中に 静かに一つの眼が浮かび出るだろう
眼はささやくだろう--私は石そして私は確実な死 と
春の気配がする。なだらかに整地された岸辺で、静かな波を見つめる。時折に今も行方不明者の捜索が行われているという、海の水際が広がっている。行くあてのない心を抱える時、人は詩の中に何かを探し出そうとするのかもしれない。「こうして上も下もない水の中で、辛うじて体の位置を保ちながら、私は待っている」。幾つものフレーズに射貫(いぬ)かれるかのようになって分厚い詩集を読み耽(ふけ)る。『安藤元雄詩集集成』(水声社)。
九冊の詩集が収められている。長い歳月の詩業の中に変わらない、問いかけようとする透徹した眼(め)の力をずっと感じた。この詩に提示されている<水>とは体から滲(にじ)み出したものかもしれないと続けて書かれている。
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