連載

詩の橋を渡って

「詩の礫」で知られる福島市在住の詩人、和合亮一さんの連載です。

連載一覧

詩の橋を渡って

問いかける眼の先に=和合亮一(詩人)

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷

2月

 地を埋めようとするものの中に 静かに一つの眼が浮かび出るだろう

 眼はささやくだろう--私は石そして私は確実な死 と

 春の気配がする。なだらかに整地された岸辺で、静かな波を見つめる。時折に今も行方不明者の捜索が行われているという、海の水際が広がっている。行くあてのない心を抱える時、人は詩の中に何かを探し出そうとするのかもしれない。「こうして上も下もない水の中で、辛うじて体の位置を保ちながら、私は待っている」。幾つものフレーズに射貫(いぬ)かれるかのようになって分厚い詩集を読み耽(ふけ)る。『安藤元雄詩集集成』(水声社)。

 九冊の詩集が収められている。長い歳月の詩業の中に変わらない、問いかけようとする透徹した眼(め)の力をずっと感じた。この詩に提示されている<水>とは体から滲(にじ)み出したものかもしれないと続けて書かれている。

この記事は有料記事です。

残り951文字(全文1321文字)

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る

ニュース特集