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社説

不首尾の米朝首脳会談 非核化で見えた深い「溝」

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 「同床異夢」の実態が露呈したとも言えようか。ベトナムで開かれた2回目の米朝首脳会談は合意文書に署名できず物別れに終わった。昼食会もキャンセルされた。決裂とも映る異例の事態である。

     記者会見したトランプ米大統領によると、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、寧辺の核施設の廃棄を提示し対北朝鮮制裁の全面解除を強く求めた。これに対しトランプ氏は制裁解除には他の条件、例えば核施設の完全な申告などが必要と答え、協議が暗礁に乗り上げたようだ。

     この辺に米朝の「溝」があると強調しながらも、トランプ氏は金氏と「建設的な時間」を過ごしたと好意的に振り返った。一方、金氏は不機嫌な様子で会談会場のホテルを立ち去った。3回目の首脳会談が開けるかどうかも含めて米朝関係が当面不安定になったのは確かだ。

    トップダウンの限界も

     とはいえ安易な合意より交渉中断の方が有益なこともある。会談前は「合意ありき」でトランプ氏が大幅に妥協するのではとの懸念が高まっていた。大統領再選をめざす同氏がノーベル平和賞を意識して朝鮮戦争(1950~53年)の終結宣言、あるいは南北経済交流を一部認める方向へ踏み出すとの観測もあった。

     こうした「前のめり」の姿勢を察知した北朝鮮は制裁全面解除という強気の要求を突きつけ、裏目に出た格好だ。トランプ氏が非核化に向けて妥協しなかった点は評価したい。同氏はオバマ前政権が結んだイラン核合意に「致命的な欠陥がある」として離脱を宣言しただけに、北朝鮮と「甘い合意」を結べば批判は避けられないと判断したのだろう。

     だが、昨年6月の初首脳会談から約8カ月。米国ではポンペオ国務長官らが北朝鮮側と接触を重ねてきた。首脳会談への調整の時間が少なかったとは言えない。にもかかわらず決裂に近い結果に終わったことは謙虚に反省する必要があるだろう。

     そもそも「非核化」の定義があいまいだ。非核化に必要な手順や時間、制裁解除の条件についても米朝間で意見の隔たりがある。

     米国は当初、短期間での非核化をめざし、「完全かつ検証可能、不可逆的な非核化(CVID)」と言っていた。最近は「最終的かつ十分に検証された非核化(FFVD)」という言葉を多用する。しかもトランプ氏自身が非核化を急がないと明言している。

     これでは国際社会が戸惑うばかりだ。米国は関係国の意見も聞いて交渉の足元を固めるべきだろう。トランプ氏は金氏を「偉大な指導者」と呼び、金氏と「恋に落ちた」とも語ったが、こうしたリップサービスは限定的な効果しか持つまい。

     また、トランプ氏は自らを交渉の達人のようにみなし、過去の米政権の北朝鮮対応を軽んじる言辞も目立った。今回、対北朝鮮交渉の難しさを思い知らされたのではないか。核をめぐる交渉では特に慎重さが求められる。まずはトランプ氏自身が自信過剰の傾向を反省しトップダウン方式を見直す必要があろう。

    対立への逆戻りは損失

     冷戦中の米国とソ連が結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約も、86年のレイキャビク会談で一度は決裂し翌87年に調印に至った。地道な交渉が必要だ。核戦争の危機とも言われた2年前の米朝対立に戻るのは世界にとって大きな損失だ。

     今後、北朝鮮がどんな態度を見せるかは流動的だが、金氏は冷静に対米協議を続けてほしい。トランプ氏が北朝鮮には「計り知れない経済発展の潜在能力がある」と言ったのはうそではない。非核化に努めることが北朝鮮を豊かにする唯一の道だ。

     首脳会談で金氏は核実験とミサイル発射の中断継続を約束したという。この約束も守ってほしい。核・ミサイルで近隣国や国際社会を脅して利得を得ようとする「厄介者の論理」とは明確に決別すべきだ。

     不安材料としては、トランプ氏に関するロシアとの癒着疑惑(ロシア疑惑)の行方も挙げられる。近く提出されるモラー特別検察官の報告によっては議会で大統領弾劾の機運が高まることもあり得るからだ。

     今回の首脳会談と並行して、米国ではロシア疑惑の関係者(トランプ氏の元顧問弁護士)が議会証言を行い、トランプ氏を「詐欺師」などと激しく批判した。内政も難問山積だが、トランプ氏は米朝交渉に引き続き力を入れ、北朝鮮非核化の約束を守ってほしい。

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