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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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名奉行の大岡忠相も…

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 名奉行の大岡忠相(おおおかただすけ)も江戸の物価はなかなか思い通りにならなかったようである。将軍・吉宗(よしむね)の命を受け、米価に合わせて他の諸物価を抑えなければならず、各業者に物価の引き下げ令を発したことがあった▲「大岡忠相」の著書のある童門冬二(どうもんふゆじ)さんによれば、この時、豆腐屋は値下げに応じず、最後まで値下げを拒んだ7軒をやむをえずに罰するはめになった。また値下げに応じはしたものの、豆腐の大きさを半分にした業者もいたという▲江戸の豆腐屋の意地、恐るべしである。さて量が半分なら消費者も分かるが、価格は変えず内容量を少し減らす食品の「ステルス値上げ」が話題にのぼる近年だ。しかしその手もいよいよ限界らしく、食品値上げが相次ぐ今春である▲きのうからは大手メーカーのサバの缶詰や冷凍食品、ちくわやさつま揚げなどの練り物、アイスクリームなどが値上げされた。来月から6月にかけてはペットボトル飲料や乳製品、カップ麺などがたて続けに値上げされる予定という▲値上げは大手のコーヒーチェーン店やファストフード店でも相次いでいる。いずれも原材料の値上がりや、人手不足による人件費や物流費の高騰などが理由とされている。コストの膨張に突き上げられるかたちでの物価の上昇である▲江戸時代にはさまざまな商品の値段を「諸色(しょしき)」と呼び、その上昇を「高直(こうじき)」、下落は「下直(げじき)」といった。今年はこの先に10月の消費増税も待ち構えている。家計に一気にのしかかってきそうな「諸色高直」だ。

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