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広がるAI導入…カキ養殖、学生評価、自動レジ 「夢の技術」はどこまで進むか

海中の水温を測るセンサーの状態をいかだの上で確認するシャープの社員=広島県江田島市で2019年2月21日午後1時ごろ、加藤美穂子撮影

 産業から暮らしまで、さまざまな場面に進出している人工知能(AI)。効率を飛躍的に高める可能性を秘めており、多様な分野に導入しようと各地で取り組みが進む。

養殖カキの幼生を付着させるホタテの貝殻。漁業者の経験に基づいて予測していた幼生が海中を漂う時期や場所について、AIで解析できないか実証実験が進む=広島県江田島市で2019年2月21日午後1時半ごろ、加藤美穂子撮影

 瀬戸内海に囲まれ、カキの養殖が盛んな広島県江田島市。波が穏やかな湾に浮かぶ小さないかだからは海中に多数のひもが伸び、先端にはセンサーが取り付けられている。そこで計測した水温や塩分濃度をAIで解析して、カキ養殖を“スマート化”する実証実験が昨年12月に始まった。

 カキ養殖は、海中に漂う0・3ミリほどのカキの幼生をホタテの貝殻に付着させ、そのまま成長させる。この採苗(さいびょう)と呼ばれる作業で、いかに多くの幼生を付着させられるかが生産を左右する。従来は熟練した漁業者がカキの卵で濁る海面を目で確認し、幼生が浮遊する時期と位置を予測して採苗しており、経験がものをいっていた。

センサーで測定した海水の温度は専用アプリを入れたスマートフォンでも随時確認できる=広島県江田島市で2019年2月21日午後2時3分、加藤美穂子撮影

 しかし、カキ養殖の担い手も高齢化が進み、「5年間で20人ほど引退し、登録する漁業者の数が100人を切った」(地元漁協)。漁業者の負担を軽減しながら、若い世代が参入するハードルを下げるため、東京大やシャープ、地元の平田水産など10の団体・企業が協力して乗り出した。実験では、5カ所のいかだで1時間ごとに計測したデータを無線でコンピューターに蓄積。膨大なデータをAIで解析して、採苗に適した時期と位置の法則性を突き止めようとしている。

 データ解析を担う東京大大学院情報学環の中尾彰宏教授(50)は「水産庁も漁業のスマート化を後押ししており、AIや通信の発達に伴って動きが加速するだろう」と期待している。実験は県の助成も受けて2021年まで続く。

進化してきた人工知能(AI)

 膨大なデータの解析が得意なAIは、人間の言葉もデータ化して解析の対象とする。

 グループで課題に取り組む学生をどうやって個別に評価するか――。近畿大経営学部で情報倫理の科目を受け持つ鞆(とも)大輔准教授(48)にとって、悩みの種だった。複数の学生で課題に取り組むグループワークが大学でも広がってきたが、1クラスにグループは30程度あり、それぞれに評価役は置けない。

 そこで、インターネットでメッセージをやり取りするチャットに着目した。グループワークのメンバーが課題についてチャットで交わす議論の履歴を取得し、AIが解析して評価する仕組みをIT関連企業と共同で構築。17年度から実証実験を始めた。

AIによる評価を参考にする学生=近畿大提供

 例えば、「課題どうなっていますか?」というメッセージは、AIが「リーダーシップ」と分類。メッセージをそれぞれ解析して、九つの項目ごとに達成度を評価する仕組みだ。このAI評価と学生同士の相互評価を参考にして学生が自己評価したところ、AIによる判断の76%を学生が受け入れる結果になった。鞆准教授は「まだ精度を高める必要があり、現在は評価を支援する位置付け。音声認識も可能にして会議の発言をAIで評価すれば、企業の人事評価にも応用できるのではないか」と話す。

     ◇

 AIの概念は約60年前に誕生した。長く「夢の技術」だったAIが急速に進化しているのは、コンピューターの性能向上に加え、大量の情報を計算できる新たな手法が次々開発されたからだ。00年代以降は「第3次AIブーム」と呼ばれ、音声認識を活用したスマートスピーカーも登場した。さらに多くの情報量を扱う画像認識は、車の自動運転を実用化するために鍵となる技術だ。

AIがパンの種類を識別する「ベーカリースキャン」を導入したパン店=兵庫県加東市で2019年2月13日午後3時53分、加藤美穂子撮影

 兵庫県西脇市に本社を置くシステム開発会社のブレインは、パン店のレジでトレーに載せたパンを置くと、AIがカメラで種類と個数を認識して、瞬時に合計額を計算する装置「ベーカリースキャン」を開発した。人間はパンの特徴と金額を覚える必要がなく、働き始めたばかりでもレジに立つことができる。人手不足も追い風となり、発売した13年からこれまでに全国の400店以上で導入された。

AIがパンの種類を識別して、レジ作業を省力化する装置「ベーカリースキャン」=兵庫県西脇市で2019年2月13日午後2時28分、加藤美穂子撮影

 同じ種類でも焼き色やトッピングの位置が異なっており、別の種類でも似ている場合がある。AIは特徴を種類ごとに見つけ出して、それを数値化。異なる角度から20~30回撮影すると識別を99%できるようになり、AIができないと判断すれば、店員がパンの種類をタッチパネルで選ぶ。ブレインの神戸寿(かんべひさし)社長(68)は「AIは無数のデータから答えを導き出し、その根拠は人には分からないので、わざと人が判断する余地を残した」と説明する。

 これからAIはどのように発達していくのか。野村総合研究所デジタル基盤開発部の長谷佳明上級研究員(41)は「暮らしの中では、スマートスピーカーで身近になった『音声』に続き、『画像』を扱うAIの活用がトレンドになるだろう。カメラにAIによる物体認識技術を組み合わせて、冷蔵庫などの家電が自ら日用品の購入を発注したり、食料品の買い忘れを防いだりするサービスなどが登場するだろう」と予想している。【加藤美穂子、久田宏】

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