田中洋之 毎日新聞編集委員
東ヨーロッパのマケドニアは先月12日、国名を「北マケドニア共和国」に変更したと発表しました。マケドニアの国名をめぐっては、隣国のギリシャと30年近くにわたり対立してきましたが、改名によってようやく解決にこぎつけました。
北マケドニアは1991年、旧ユーゴスラビアから独立した際、同地ゆかりの古代マケドニア王国にちなみ、国名を「マケドニア共和国」としました。マケドニア王国といえば、ヨーロッパからアジアにまたがる広大な多民族国家をつくったアレキサンダー大王で知られます。
これに反対したのが、南隣のギリシャです。ギリシャは、マケドニアがギリシャ古来の由緒ある名であり、それを国名に使うのは、ギリシャ北部のマケドニア地方を領土に収めようとする野心を示すものだ、と非難しました。独立まもないマケドニアが93年に国連への加盟を申請した際、ギリシャの反発を受けて、「マケドニア旧ユーゴスラビア共和国」という国名をひとまず使うことになりました。
その後も両国の国名論争は続きましたが、2017年にマケドニアで政権交代があり、ギリシャと話し合いを始めました。その結果、国名を北マケドニアに変更することで昨年6月に合意。国民投票と憲法改正を経て、正式に改名を決めました。
マケドニアの国名をあきらめることには、国内で抵抗もありました。しかし、ギリシャとの和解が実現したことで、ギリシャの反対で見送られていた北大西洋条約機構(NATO)とヨーロッパ連合(EU)への加盟に道が開けました。つまり、「名を捨てて実を取る」ことを選んだといえます。
北マケドニアが来年開催される東京オリンピックに出場すれば、新国名を世界にアピールする絶好の機会となりそうです。
通算8年半にわたりモスクワ特派員をつとめ、ユーラシア大陸の各地を取材した。ロシアが生んだキャラクター「チェブラーシカ」をこよなく愛する。