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北海道地震

半年 亡き隣人の田、命つなぐ 厚真の米農家、土砂残る場所で再起

静かに時を待つ大型ハウスのコンバインやトラクターと荒谷志津夫さん=北海道厚真町高丘で2019年3月2日午前11時51分、福島英博撮影

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 昨年9月の北海道胆振(いぶり)東部地震から、6日で半年を迎える。最大震度7を記録し36人が犠牲になった厚真町では、冬を越した農家が被災した水田での作付けに向け、準備に取りかかっている。【福島英博】

     大型のビニールハウスに、1羽のスズメが舞い込んだ。土の香りが鼻をくすぐる。

     ハウスの中には、4台のコンバインが並ぶ。田んぼに融雪剤をまいて春の訪れを待つ厚真町高丘地区の農家、荒谷志津夫さん(46)は「今年こそ、この機械がフル稼働できるようにしなければ」とつぶやいた。

     同地区では地震直後、倒木を巻き込んだ土砂が水田に流れ込んだ。24ヘクタールで稲作をする荒谷さんを含め多くの農家が、収穫を控えていた米を放置せざるを得なかった。

     家業の農業に就いたのは20歳のとき。24歳で結婚し、実家の近くに一軒家を借りて米のほか、約11ヘクタールの畑で小麦、大豆、ハスカップを作る。

     あの日、妻と中学3年の三女は2階で就寝し、自身は1階の窓越しに山の上空の雷を見ていた。突然、激しい揺れに襲われ、不気味な地鳴りと停電で妻と娘が悲鳴を上げた。

     すぐに道路の向かい側から土砂が押し寄せてきた。家の前に止めた車がのみ込まれ、玄関も押しつぶされた。点滅を続ける車のハザードランプが、暗闇をぼんやりと照らした。携帯電話の明かりで靴を探し、窓から目の前の畑に逃げて夜明けを待った。

     薄明かりに浮かび上がった景色は、一変していた。道路は寸断されて逃げ場がなく、地震の6時間後に消防ヘリで救助された。上空から見て「これが現実なのか」と目を疑った。

     実家の両親は無事だったが、隣に住む稲作農家の松下一彦さん(63)と陽輔さん(28)親子が犠牲になった。気さくな父子だった。

     約2カ月間避難所に身を寄せ、昨年11月に本郷地区の仮設住宅に移った。別棟には両親も暮らす。厳しい寒さのときもあったが「仮設に不満はない。苦にならない」という。

     2月中旬、仮設住宅の談話室に地元農家が集まった。話題は地震で使えなくなった農地をどうするか。亡くなった松下さんの水田(約10ヘクタール)は、特に被害が大きい。それでも荒谷さんは声を上げた。「僕に作らせてください」。異論は無かった。賃貸借契約を結ぶために町内のアパートに住む松下さんの妻を訪ねると「あんなに土砂が入った所でも作ってもらえるのかい」と感謝された。

     手つかずの土砂が残る田んぼ脇に立った。「少しでも多くの米を作る。家族のため、地域のためにも」

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