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武田 砂鉄・評『居るのはつらいよ』東畑開人・著

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生産的か非生産的かを誰も問うてなんかない

◆『居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書』東畑開人・著(医学書院/税別2000円)

 よく、忙しいビジネスマン向けの記事に「何もしない時間を作りましょう」みたいな文言があり、何もしないってどういうことだろう、と悩む。何もしないという状態などありえるのか。屁(へ)理屈と自覚しつつも、何かをする=生産的である、と規定すべきではないだろうと思う。人間の実力を計測する尺度として、生産できるかどうかが浮上すると、しんどくなる人たちが出てくる。活躍している人の中には、そこに鈍感すぎる人が少なくない。たとえば「保育士は誰でもできる仕事だから給料が安い」なんて言ったりする。呆(あき)れる。ふざけるんじゃない。

 沖縄のデイケア施設で働くことになった若き心理士による一冊は、「ただ、居る、だけ」の世界のさざ波が綴(つづ)られる。だが、その波にはいくらだって種類がある。そこにいる多くの人は「何かふしぎなことをしている人ではなく、何もしていない人」だった。だから自分は「とりあえず座っている」のが仕事だった。

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