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全人代2019

中国にリストラの波 ネットバブル露呈

中国の成長率と政府目標の推移
中国で「リストラ」が検索された頻度の推移

 経済が減速する中国で、昨年後半からインターネット企業を中心に「リストラの波」への警戒が強まる。体制の不安に直結する政治的課題でもあり、習近平指導部の優先課題に急浮上する。5日に開会した全国人民代表大会(全人代)の政府活動報告でも雇用への危機感が浮き彫りになった。

     「2019年は過去10年で最悪の年かもしれない。だが今後10年では最良の年と言われるだろう」。国内経済の不透明感を反映し、中国で耳にする言葉だ。

     昨年以降、企業の人員削減や求人停止を巡る報道が後を絶たない。今年2月には中国メディアが大手配車サービス「滴滴出行」が従業員の15%にあたる約2000人を削減する計画と伝えた。

     ある金融会社のリポートは「大手求人サイトの募集件数が昨年4~9月の半年で約202万件減少」したとも指摘していた。国民の雇用不安を象徴するかのように、中国大手検索サイト「百度」では「リストラ」という言葉の検索頻度が08年のリーマン・ショック以来の多さとなった。

     「今の中国で大学を出て留学もした人間が、失業保険を受けるとは考えもしなかった」。北京市の羅〓(らゆう)さん(32)が苦笑いした。昨年末までオンライン教育会社で実用英語部門の責任者だった。会社が主要事業の公務員試験部門に集中するため、新規事業からの撤退を決定。羅さんら約20人が部門ごとリストラされた。

     中国では羅さんや同じ世代の人たちの多くが良い環境を求めて転職を重ねてきた。しかし今、潮目の変化を感じている。「以前のようなステップアップが難しくなった。実感として消費意欲にも悪影響が出ている」

     北京の人材会社幹部は「ネット業界のバブルが露呈した」と率直に語った。ネット業界はこの10年足らずで中国経済の主役となり、空前の規模でヒトとカネを引きつけた。しかし経済の減速に米中貿易摩擦も加わり、投資家が財布のひもを締め始めた。投資頼みのネット企業は人員の整理が避けられなくなり、優良企業の間でも学歴や技能による従業員の淘汰(とうた)が広がる。人材会社幹部は「少数の優れた人材の待遇は引き続き上がり、普通以下は苦しくなる。両極化が進む」と予測した。

     長年にわたり、中国の雇用を下支えした中小企業も苦境にある。

     北京郊外の40代男性は2年前まで縫製工場を経営し、20人ほど雇っていた。環境規制の強化で閉鎖を余儀なくされた。「環境の大切さは我々も理解している。だが役人から『明日までに改善しろ』と無理を言われたら雇用を守るどころではなくなる」

     社会保障費の増大も雇用に影を落とす。中国各地では今年から企業と個人の社会保険料の徴収業務が税務局に移管された。税との一元徴収によって、中小企業に広く存在していた保険料の過少申告をなくし、社会保障財源を確保するためだ。「事実上の負担増であり、雇用を絞らざるを得ない」。北京の内装業者が苦しい胸の内を明かした。【北京・河津啓介】

    雇用対策に軸足強調

     政府活動報告でも雇用の「変調」に強い警戒感が示された。

     「安定成長の第一の目的は雇用の保障だ」。李克強首相はこう強調し、雇用対策を経済政策の重点分野の一つに「格上げ」した。「比較的十分な雇用を確保できる」と楽観的だった昨年の報告とは対照的だ。

     国内経済の減速と、米国との貿易戦争という「内憂外患」にさらされる中、習指導部は今年、「経済の安定」に軸足を移す姿勢を鮮明にしている。企業負担を2兆元(約33兆円)規模で軽減▽小規模企業向け融資を30%増▽地方債の発行枠を8000億元増やして重点事業の建設を推進--。李氏が打ち出した「カンフル剤」は、有料道路やインターネットの料金引き下げにまで及ぶ徹底ぶりだ。しかし、市場ではそれでも「中国経済の減速基調は今年も続く」との見方を変えない。

     経済成長に伴う労賃の上昇に加え、生産年齢人口の減少など社会の構造変化に直面し、中国では、かつてのような新興国型の高成長は期待できない。習指導部も中国経済の減速は止めようがないことは認識している。李氏が今年の成長率目標引き下げに踏み切ったのも、経済の減速をある程度容認する姿勢を国内に示すことで地方政府のばらまき型景気対策が過熱しないようクギを刺す狙いがある。

     景気の急激な落ち込みを防ぎつつ、時代の変化に対応した強固な経済にいかに作り替えるか。習指導部は景気対策と構造改革の両立という難題に挑むことになる。【北京・赤間清広】

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