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塚原あゆ子

TBSドラマ名演出家のメディア観 初映画監督作を経て、今思うこと

映画「コーヒーが冷めないうちに」で監督を務めた塚原あゆ子さん

 女優の有村架純さん主演で、昨年9月に公開された映画「コーヒーが冷めないうちに」のブルーレイディスク(BD)とDVDが8日に発売される。過去に戻れる不思議な席のある喫茶店を舞台にした心温まるファンタジーで、「4回泣けます」とのコピーも公開当時、話題に。同作で映画監督デビューを飾ったのが、「Nのために」「重版出来!」「アンナチュラル」「中学聖日記」といったTBS系の連続ドラマに数多く携わってきた演出家の塚原あゆ子さん。「コーヒーが冷めないうちに」を経て、今、改めて思うことは何なのか……。

新たな気づき 「ゆるやかに人の心に残るという文化がある」

 「コーヒーが冷めないうちに」の公開に合わせたインタビューの中で、映画とドラマとの違いについて「ない」と答えていた塚原さんだが、現在は「やっぱりメディアとして全然違うなっていう印象がある」と言う。

 気づきのきっかけになったのが、視聴者の受け止め方。「ドラマは短距離走を10本やる感覚。毎週毎週、撮影と編集を繰り返して、反応をゆっくりと聞くなんていうことはない。あったとしても、それに対してどんどんと打ち返していく、みたいな。一方で映画は、公開するまでも時間はかかりますし、公開したあともご覧になった方に、1週間たってからや、『実はあのときこう思った』と、思い返して感想を言っていただけることが非常に多くて。たぶんドラマよりも映画の方が、ゆっくりと感想が出るものなんじゃないのかって気がついたのが大きい」と話す。

 以前は「テレビの人間として、視聴者にザッピングされないため、自分の作品を瞬発的に何かを思ってもらえるものにしなければいけないという思いがあった」というが、映画を撮ったことによって「ただそうではない、ゆるやかに人の心に残るという文化があるんだっていうのが、初めて分かった。それが分かったからといって、テレビの世界に戻って『ゆるやかに~』という頭でいると、チャンネルを変えられてしまうので、そこはまた別の話になるんですけど。感想の抱かれ方がこれほど違うのか、というのはとても勉強になりましたし、そういった文化も愛していきたいなって思えるようになりましたね」と明かす。

映画は「人の人生に点で色濃く残る」 一方でドラマは…

 そのほか映画というメディアの特性として、「人の人生に点で色濃く残ること」を挙げ、「映画は2時間ぐっと見て、見返すときももちろん2時間。その分、拡散しないで色濃く残るというか。もちろんドラマも残りますけど、基本的に1週間ごとに記憶が更新されていくので、もうちょっと中長期的。映画に比べると少しぼんやりとしている。たぶん皆さんそうだと思うんですけど、ドラマは何となく『バブル期の頃の~』とか『90年代の~』みたいに、何年の何月期って感じで覚えてはいない。でも映画は『高校1年の時に見た』とかピンポイントで覚えていたりする」と考えを披露。

 演出家としては、「この作品を撮るなら映画、この作品ならドラマって考えるようにはなった」といい、「原作ものであろうがオリジナルであろうが、どれくらいの尺が作品にとってふさわしいのか、そこはちゃんと選ぶべきなんだと。表現したいことが一気にあって、見た人の心に色濃く残したいのか、それとも誰かの人生の3カ月に寄り添うものにしたいのか。作品ごとのベストな選択があるのではないかなって以前よりも考えるようになりましたね」と語っていた。

テレビというメディアの可能性 軽々と国境越える?「もっともっと世界を視野に」

 「コーヒーが冷めないうちに」以降、「中学聖日記」に現在、放送中の「グッドワイフ」と再び連続ドラマが主戦場となっている塚原さんだが、「実はホラーが撮りたいんです」と意外な野望も。

 「もともとはホラーが撮りたくて、この世界に入ってきているので、そういうチャレンジができたらなって思いますし、映画やドラマにこだわらず、各メディア、その垣根をうまく越えていけるような仕事をしていきたい。映画の監督がドラマを撮ってもいい、スマホで見る作品を撮ってもいい、たくさんの才能が行き来するような世界になればいいなって個人的には思うので、そういった意味で、やったことのないホラーをやってみたいな」と笑顔を見せる。

 もちろん、テレビというメディアの可能性も捨ててはいない。「私はテレビ業界がコンテンツを作る業界と考えれば、まだまだ莫大(ばくだい)な力を持っていると思う」ときっぱり。「リアルタイムで見る人もいれば、録画で見る人、あとは見逃し配信であったり。視聴のスタイルがどんどんと広がりを見せていて、ドラマのオンエア直後に台湾やハワイの方から私のところにメッセージが来るような時代だって考えると、軽々と国境を越えるなって思いますし、もっともっと世界を視野に入れたコンテンツ作りを意識していかなくてはいけない」と力を込める。

 さらに「もっとグローバルに。それはテレビドラマを売るっていうこととはまた違うものなのかもしれないし、そこに制約は設けたくない、ドラマはここまで、映画はここまでってしないで、みんなが自由に作品に触れられる世界がそこまで来ているのなら、そこに乗っかってみるのもいいだろうし、そうやっていくことがテレビ業界全体にもいい影響が出るんじゃないのかって思いますね」と思いを明かしていた。

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