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著作権法改正案に懸念 ダウンロード違法化拡大、スクショも対象に

文化庁が入る中央合同庁舎第7号館=東京都千代田区霞が関で、本橋和夫撮影

 海賊版サイト対策の強化を目的とした著作権法改正案への反対意見が相次いでいる。改正案ではスマートフォンなどの画面をメモ代わりに画像として保存する「スクリーンショット」も違法となる恐れがあり、国民生活に与える影響も大きい。政府は今国会での成立を目指すが、利益が守られる側の漫画家団体からも見直しを求める声が上がっている。

 法改正は、海賊版の被害増加を食い止める目的で、文化庁長官の諮問機関・文化審議会で検討されてきた。改正案では現行法で映画などの動画と音楽に限定されていた違法ダウンロードの対象を、著作権者に無断で公開された漫画や雑誌、小説、写真など全著作物に拡大する。

 海賊版対策は当初、政府の有識者会議がサイトへの接続遮断(ブロッキング)を議論したが、ブロッキングのためにネットユーザーのアクセスを把握するのは、憲法で保障する「通信の秘密」の侵害にあたるとして法制化を断念。文化審議会の小委員会が昨年10月、違法ダウンロードの対象拡大の検討に着手した。

 今年1月の会合で報告書を取りまとめる予定だったが、複数の委員から「議論が拙速だ」との批判が続出。刑事罰の対象範囲も不明確だったため、悪質な行為に限定するよう求める意見書が複数委員の連名で提出された。

 これを受け、文化庁は刑事罰を適用するのは「海賊版と知りながら反復、継続する場合」に狭めたうえで、2月22日に改正案を自民党文部科学部会などに示し、了承を得た。ところが同27日に日本漫画家協会が、他の作家のイラストを参考のために保存することもできなくなるなどの理由で、対象を「原作のまま、丸ごと複製すること」に絞り込むよう求める声明を公表。自民党内の最高決定機関の総務会は「理解が得られていない」と改正案を差し戻した。

 違法となる対象範囲の広さも問題視される。改正案では若者を中心に一般的に使われるスクリーンショットも対象から除外しなかった。そのため、著作権を侵害していると知りながら、他人のブログの画面やアニメのキャラクターが映り込んだ画像を保存した場合は違法となる。ネット上で公開された学術論文も対象となるとし、ネットユーザーに「ネットからのダウンロードはほとんど違法になる」との懸念が広がっている。

 小委員会の委員を務めた前田健・神戸大准教授は「国民生活への影響が大きすぎる。刑事罰の対象は反復行為に加え、漫画1冊や1話をまるごと保存するなど、売り上げに影響が出るケースに限るべきだ」と指摘した。これに対し、文化庁担当者は「『原作のまま』などと限定すると、数ページずつ細切れに分割してダウンロードする行為が適法になる」と説明。現行法下で動画と音楽の摘発例がないことを強調して「違法行為に対する抑止効果があり、国民生活への影響も限定的だ」と理解を求める。

 「ラブひな」などの作品で知られる漫画家で日本漫画家協会常務理事の赤松健さんは「海賊版を捕まえるために、あまりに細かい網で小さい魚まで一網打尽にしようとしている。国民が萎縮し、文化が停滞してしまう」と懸念。「海賊版対策には反対していない」としつつも「文化庁は『漫画家の権利を守るために』と言いながら、協会に相談もなく改正案の検討を進めた。このままでは禍根を残す」と不信感をあらわにする。【伊澤拓也】

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