医師から「透析中止」の選択肢 最後まで揺れた女性の胸中 “自己決定”と言えるのか

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「死」の選択肢提示の現場になった公立福生病院の腎臓病総合医療センター=東京都福生市で2019年2月14日午前10時55分、斎藤義彦撮影
「死」の選択肢提示の現場になった公立福生病院の腎臓病総合医療センター=東京都福生市で2019年2月14日午前10時55分、斎藤義彦撮影

 東京都福生市の公立福生病院で、人工透析治療の中止という選択肢が外科医(50)から示され、腎臓病患者の女性(当時44歳)が死亡した。「透析しない」「撤回しようかな」。亡くなるまで女性の胸中は揺れた。いったん「死」を選んだ彼女に何があったのか。

 「おそらく2週間ぐらいで死を迎えます」。昨年8月9日。外科医は、そう女性に告げた。女性は血液浄化のために腕に作った血管の分路(シャント)がつぶれたため、通っている診療所の紹介状を持って訪れていた。提示されたのは(1)首周辺に管(カテーテル)を入れて透析治療を続ける(2)透析治療を中止する――という二つの選択肢だった。

 夫(51)によると、女性は1999年、自殺の恐れがある「抑うつ性神経症」と診断されていた。自殺未遂が3回あり、「死にたい」「これ以上苦しいのが続くなら、生きていない方がましだ」と漏らすことがあった。女性は「シャントが使えなくなったら透析はやめようと思っていた」と、いったんは透析中止を決めて意思確認書に署名した。

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