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社説

過酷事故8年の原発 政策転換はもはや必然だ

 世界を震撼(しんかん)させた原発過酷事故から8年。東京電力福島第1原発の構内は整備が進んだが、当時の悪夢の爪痕は厳然として残る。

     メルトダウンした1~3号機の中には溶けて構造物と混じり合った燃料デブリ計約900トンがそのまま存在する。先月、特殊な器具でデブリに触れることはできたが、取り出しの見通しが立ったわけではない。

     廃炉のゴールは何十年先なのか。何兆円の費用がかかるのか。わかっているのは道のりの困難さだけだ。

     一方、この8年で誰の目にもはっきりしてきたことがある。持続可能性のない原発の未来像だ。こうした状況で、私たちがめざすべき道は何か。現実を直視し、エネルギー政策を転換していくことが急務だ。

    廃炉作業の道のり遠く

     東電は今後、燃料デブリを詳しく分析し、2021年から本格的な取り出しを始める計画だ。しかし、原子炉建屋内は放射線量が極めて高い。スケジュールありきで作業を急げば思わぬトラブルに直面するだろう。作業員の安全をないがしろにすることがあってはならない。

     事故直後からの課題である汚染水問題も作業の困難さを象徴する。対策の切り札とされた「凍土遮水壁」は完成したものの、原子炉建屋への地下水流入は止まらず、処理水は構内のタンクにたまり続けている。

     放射性トリチウムが残留するこの水をどうするか。薄めて海に放出すれば確かに作業の安全性は高まる。しかし、漁業者らから懸念の声が上がるのは当然のことだ。政府と東電は、透明性のある国民的な議論を積み重ねなければならない。

     こうした困難な廃炉作業を尻目に政府は「原発維持政策」を進めてきた。福島の事故以降、再稼働した原発は9基。例外だった運転40年を超える老朽原発の延命も「原則」となった。被災した老朽原発「東海第2」を再稼働させる計画さえあり、「原発依存度の低減」という政府の方針は有名無実化しつつある。

     一方で、小規模原発の廃炉決定も相次ぐ。東電の被災原発を除くと7原発11基。事故後に求められるようになった安全対策の費用が回収できないとの経済合理性からの判断だ。

     高額の安全対策費は「原発輸出」の破綻にもつながった。今年に入って日立製作所が英国での原発建設計画を凍結、三菱重工業もトルコでの建設計画から事実上撤退する見通しだ。東芝はすでに海外の原発事業から撤退。安倍政権が成長戦略と位置づけてきた原発輸出に経済性がないことはもはや明らかだ。

     こうした状況をみれば事故当事国である日本での原発新増設は事実上不可能だ。少なくとも西側諸国では原発が持続可能性のない斜陽産業となったことを政府は認識すべきだ。

     その上で、昨年改定したエネルギー基本計画の「30年度に原発比率20~22%」を見直し、新たなエネルギー政策の構築に踏み出さねば、対応が後手に回るばかりだ。

    再生エネ活用に投資を

     中でも重要なのは再生可能エネルギーの「主力電源化」だろう。もちろん、それは簡単な課題ではない。太陽光や風力で従来の原発分をどう補うのか。変動する再生エネの調整に火力発電を使うと温暖化対策に逆行する、という問題をどう解決するのか。一朝一夕にはいかない。

     ただ、これまでの原発依存政策が再生エネの成長を妨げてきたことも確かだ。世界で拡大する太陽光パネルや風力発電機の市場で日本の影が薄くなってしまった背景にも、政府の失策があるだろう。

     今後は、再生エネを活用するための投資にこそ力を入れるべきだ。「国のインフラ」としての送電網の整備、原発優先の給電システムの見直し、原発廃炉で余った送電網の有効活用などが重要だ。

     同時に、再生エネを安定運用するための気象予測や電力需要予測、需要と供給のバランスを取るシステム、蓄電池の開発など、日本の得意分野をビジネスとして発展させる方向にかじを切ったほうがいい。

     今後、国内外で多数の廃炉が必要となることを思えば、廃炉人材を育成し、廃炉ビジネスを展開する戦略も立てるべきだ。

     事故炉と通常の原発の廃炉作業は異なるとはいえ、福島の経験を一般の廃炉に生かすこともできるはずだ。福島で得られる知見を統合し、一般の廃炉技術の開発につなげる。官民が協力し、「原発後」の産業にも活路を見いだしてほしい。

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