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村上陽一郎・評 『胎児のはなし』=増崎英明、最相葉月・著

 (ミシマ社・2052円)

絶妙かつ啓発的な対話

 大胆な、しかし、まことに直截(ちょくせつ)・明快な表題である。練達の臨床産婦人科医に、著名なサイエンスライターが、疑問をぶつけて食い下がる。そこから生み出される対話は、まことに絶妙、かつ啓発的である。

 妊娠から出産まで、観察し難い世界だからこそ、今まである程度神秘に包まれてきた。増崎先生に言わせると、今でも判(わか)っていることは僅かだそうだが、しかし、体内の状況を非侵襲的な方法で観察する技術が進んだお蔭(かげ)で、昔に比べれば、色々なことが判ってきた。そもそも、出生時の体重が昔とは随分変わった。八十数年前、私はほぼ一貫目(つまり約三千七百グラム)で生まれたという。三歳上の姉は一貫を遙(はる)かに超えて生まれたそうだ。それが標準だった。今は三千グラム前後が標準とのこと。増崎先生が立ち会った最重量の赤ちゃんは五千五百グラムあったという。最軽量は五百グラム足らず。いわゆる超低体重出生児の日本での記録(当然少なくとも然(しか)るべき期間は出生後生かすことができた)は二百六十グラムだそうな。

 そもそも水生動物である胎児の排泄(はいせつ)についての話からして面白い。尿の大部分(一日七百CC程度らしい)は自分でまた飲んでいるし、便の方は世に出るまで溜(た)め込んでいる。それでも疑問はいくらでもある。羊膜・羊水はどこから来たのか。羊水は何故「汚れ」ない(汚れたら、処置が必要)のか。

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