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磯田道史・評 『十八世紀京都画壇 蕭白、若冲、応挙たちの世界』=辻惟雄・著

 (講談社選書メチエ・1836円)

 いまでこそ伊藤若冲の絵は人気だが、半世紀前はそんなことはなかった。「若冲なんて昔はゲテモノ扱い。ちゃんとした床の間には掛けらんなかったよ。第一、安かった」と、古株の画商に何度も聞かされた。この「ゲテモノ」画家たちをちゃんと評価したのが、本書の著者・辻惟雄(のぶお)氏である。『奇想の系譜』で、若冲たちを「奇想の画家」とし世に紹介した。当時も若冲の図録はあり、コレクターのプライス氏の注目はあったが、「奇想の画家」のすごさを緻密に言語化し、我々に突きつけたのは、辻氏の功績である。辻氏は医師になるため東大の理科二類に入ったものの理系科目が苦手で、美術史に進まれたそうである(『奇想の発見』)。この方針転換がなかったら、きっと若冲たちの再発見も大きく遅れていただろう。

 その辻氏が方々に書きためられた文章がまとめられ、『十八世紀京都画壇』と銘打って、今回出版された。本書を読めば、この日本に「若冲的なるもの」は、いかなる経緯で出現したのかが、了解できる。日本史上、いや世界史のうえでも、日本の十八世紀は面白い。今の我々につながるような文明が生じたのが、二百五十~二百年前の江戸後期であると気付いていた識者は、かなりいる。文化人類学者の梅棹忠夫氏も、明治百年のときに、わ…

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