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週刊サラダぼうる・山田祐一郎

つるつる道をゆく 白ご飯と一緒に

幅4センチもある「芳乃家」のきしめん。丼ものとのセットもある=山田祐一郎さん提供

 「きしめん」って知っていますか。そう聞かれて「見たことも聞いたこともない」と答える人はほぼいないのではないか。名古屋から離れた場所に住んでいると、知ってはいるが実際に食べたことがない、という人もいるだろう。福岡に暮らすぼくがその一人。26歳まできしめんを口にしたことがなかった。それでも、あの白くて平べったい麺がすぐに思い浮かんだものだ。

     そんな全国的にもポピュラーな名古屋名物のきしめんだが、いつ、どうやって誕生したのか、その名前のルーツも明らかになっていない。ぼくもいろいろと調べてはみたが、「きじめん」「紀州麺」など諸説ある。それがたまらなく楽しい。ロマンの塊じゃないか。出所がはっきりしているならば、ふむふむ、なるほどと、さも全てが分かったような顔で食べてしまうというもの。これは恋愛と同じなのかもしれない。分からないから面白い。もっと知りたいからひかれる。

     昨年、雑誌の取材で名古屋へ2度出かけた。もちろん、きしめんもしっかり食べてきた。その中で印象に残っているのが、市内にある「芳乃家(よしのや)」。現在、2代目・野嶋道雄さんが実母と2人で切り盛りする地元の人気店だ。建物の正面に書かれた「手打」の文字が目を引く芳乃家は1953(昭和28)年の創業。きしめんの幅は、なんと4センチもある。名古屋でも屈指の幅の広さだ。

    老舗の風格を感じさせる芳乃家の外観=山田祐一郎さん提供

     芳乃家を含め、きしめんを提供している店は数多くあるが、実はそのほとんどが「きしめん専門店」ではない。あくまでうどんの店であり、メニューの一つとしてきしめんも出しているというのが一般的なようだ。

     野嶋さんは「地元ではきしめんをご飯と一緒に食べる人が多いんです。そういう食文化があるんですよ」と教えてくれた。その言葉で、ようやくきしめんとの距離が縮まった気がした。きしめんと聞くと、あの幅の広さの印象が強く、どうしても見た目に気持ちが引きずられる。しかし、名古屋らしい味わいを感じさせる重要な要素として、だしの存在も忘れてはならない。

     芳乃家のだしはムロアジが主体。このムロアジのだしが名古屋のきしめんにおける基本なのだという。野嶋さんはこれにウルメ節、サバ節、昆布などを合わせ、味に奥行きを出している。味付けに使うのはたまりじょうゆで、これも名古屋に根付く調味料の一つ。こうして完成したつゆが、きしめんをソウルフードたらしめているのだ。そしてこのつゆこそが、ご飯を誘うのだろう。名古屋の人々にとっては、みそ汁のようなものなのだと思った。

     次に食べるときは、きしめんの横に白ご飯を添えたい。(ヌードルライター)=次回は4月8日に掲載します

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