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透析中止で死亡 長男、母の再開意思を知らず「初孫抱かせたかった」

公立福生病院=東京都福生市で2019年3月6日、宮武祐希撮影

 「僕にとっては大事な母親。長生きしてもらいたかった」。公立福生(ふっさ)病院(東京都福生市)の人工透析治療を巡る問題で、昨年8月に亡くなった女性(当時44歳)の長男(28)は、女性が透析再開の意思を外科医に伝えたことを死後に知った。亡くなる10日前に生まれた初孫の男の子を抱かせたかったと悔やむ。

 夫(51)や長男によると、女性は糖尿病を長く患い、夫もぜんそくでなかなか働けず、生活は苦しかった。だが、冗談を言っては笑わせてくれた女性のことを、長男は「一緒にいて、あんなに楽しい母親はいない」と振り返る。だからその日も、冗談かと思った。

 亡くなった昨年8月16日の3日前。結婚して独立した長男を突然訪ねた女性は「(透析治療が)できないって言われたから、とりあえずやめる」と切り出した。治療をやめる選択肢を外科医から示され、意思確認書に署名した後のことだ。絶句するしかなかった。「もしかしたら死ぬかもしれない」。女性の表情は硬かったという。

 翌14日、入院。「どうだった?」。「平気そうだよ」と言う電話の父の言葉に長男が安心した2日後、容体は急変する。最後に会ったのは亡くなる日の朝。まともに会話ができない。「何で? まずいな」。嫌な予感がした。長男によると、外科医は「お母さんの意思を尊重する。容体が今後急変することがあるが、何もできない」と長男に告げ、強い鎮静剤を女性に打った。

 30分間だけ、話ができた。10日前に生まれた初孫の男の子の写真を、長男は女性に見せた。「お前に似てるよ」。女性は薄く笑い、つぶやいた。家の中の片付けをしなかったのが「心残り」と言った。「もう死ぬから、後のことをよろしくね」。それが最後だった。

 女性も夫も死の前日の15日、透析治療を再開する意思を外科医に伝えていた。それを長男が知ったのは母の死後、父からだった。母が自分に話さなかったのは、何を言ってもムダだと思ったからではなかったか――。長男は言う。「もしあの時、『透析治療を再開したい』と話してくれていたら、別の病院に変えさせて、透析を続けてもらっていた。戻ってきてほしい」【斎藤義彦】

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