警視庁深川署に入る酒井佑太容疑者=東京都江東区で2019年3月13日午後3時10分、丸山博撮影

 特殊詐欺に特有の手口だったアポ電(アポイントメント電話)が、凶悪事件に使われていたのか――。東京都江東区で加藤邦子さん(当時80歳)が殺害された事件は、発生から2週間で実行役とされる男3人が逮捕され、新たな局面を迎えた。他に関与した人物はいないのか。組織的な背景はないのか。警視庁捜査1課は、付近住民のみならず世間を震撼(しんかん)させた事件の全容解明を目指す。

警視庁深川署に入る須江拓貴容疑者=東京都江東区で2019年3月13日午後2時55分、丸山博撮影

 「明日は我が身と思って怖かったので、次の事件が起きる前に捕まって良かった。警察には背景も含めて解明してほしい」。13日夜、容疑者の逮捕を聞いた江東区の70代女性は話した。加藤さんとは同じ歌唱サークル仲間。事件後は、病を患いながら歌を楽しむ加藤さんを思い出し「なぜ犠牲にならなくてはいけなかったのか」と感じていたという。

警視庁深川署に入る小松園竜飛容疑者(中央)=東京都江東区で2019年3月13日午後6時50分、丸山博撮影

 加藤さんと同じマンションに住む女性(78)は事件後、施錠やインターホンの確認に以前より注意するようになった。「うちにも数年前に息子やめいを名乗って金を要求する電話があった。男3人に押し入られたら抵抗できないし、怖い思いをした加藤さんが気の毒でならない」と声を落とした。

 捜査1課によると、3容疑者は黒ずくめの格好で加藤さんのマンションに出入りしていた。事件後は服を着替え、軽乗用車で神奈川方面に逃走していた。車や奪われたインターホンは見つかっていないという。車の調達やアポ電など事件に関する役回りが多いことから、捜査1課は暴力団などの組織的な背景も視野に捜査を進める。

 アポ電は特殊詐欺グループが詐欺に取りかかるために用いる手法とされている。今回の事件では、現金があるとの情報を得た詐欺グループが途中で強盗に切り替えたのか、最初から強盗目的のグループがアポ電を使ったのかは分かっていない。ただ特殊詐欺に詳しい暴力団関係者は「新しい犯罪のかたちだ」と指摘している。【土江洋範、佐久間一輝、伊藤遥】