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マリナ・シルバさんインタビュー(上)アマゾン森林伐採は発展もたらさない 温暖化防止へ行動を

100を超える部族の代表がブラジル政府に居住地の画定や健康、教育の向上を求めて参加したフリーランドキャンプであいさつするマリナ・シルバさん=2018年4月24日、ブラジリアでレオ・カブラル氏撮影

 地球温暖化防止に向けたパリ協定は2020年から施行されるが、ブラジルでは開発志向派のジャイル・ボルソナロ氏が新大統領に就任し、米国に続いてパリ協定から離脱するのではと懸念されている。アマゾン熱帯雨林の保護活動で著名なブラジルの元環境相、マリナ・シルバさん(61)に地球環境問題と世界情勢について書面インタビューした。2回にわたって掲載する。【MOTTAINAIキャンペーン事務局、翻訳協力 舛方周一郎・神田外語大学外国語学部専任講師】

     ――18年のブラジル大統領選で汚職追放を掲げて当選したボルソナロ氏が1月1日、新大統領に就任しました。ボルソナロ氏は女性や性的少数者、黒人に対して差別的発言を繰り返し批判を浴びてきました。それにもかかわらずボルソナロ氏が支持を集めた理由は何でしょうか。また大統領選でボルソナロ氏と戦ったシルバさんは何を求めますか。またシルバさんご自身は今後どのような活動を行っていくのでしょうか。

     シルバさん ボルソナロ氏は大統領選挙で、軍人や政治家、富裕層、大部分の保守的なカトリックと福音派といったブラジル社会のより保守的な階層からの支持を得ています。これは過去20年間、ブラジル民主運動党(PMDB)の支援のもとでの労働党(PT)とブラジル社会民主党(PSDB)による政権運営の失敗と、その失敗の原因となった大規模な汚職事件の大混乱によるものです。加えてボルソナロ陣営は、選挙の数カ月前から私を含む多くの候補者を標的にしたフェイクニュースを拡散しました。

     ボルソナロ政権は、過去40年間にブラジルが培ってきた社会環境政策を破壊し、今後はパリ協定からのブラジルの脱退を準備するとともに、アマゾンの大規模な森林伐採や、バイオマスエネルギー利用の増加を過度に促すはずです。自然保護区域や先住民が居住する土地は、廃止または面積減少という強い脅威にさらされています。私はすべての社会環境的な政策の後退に抵抗する中心となり、「持続可能なネットワーク」(シルバさんの所属政党)の指導者として、持続可能な開発の価値と実践を促進する教育と政策形成の分野で活動を続けていきます。

     ――昨年12月、ポーランドのカトウィツェで開かれた国連気候変動枠組み条約第24回締結国会議(COP24)では、地球温暖化対策の新たな枠組み「パリ協定」の実施方針(ルールブック)を採択しました。これによって途上国を含むすべての国が基準年や目標年をそろえ、温室効果ガス削減目標を策定し国連に報告することが決まり、先進国から途上国への資金支援については、先進国が隔年で向こう2年間の支援額を自主的に提示することになりました。シルバさんは今回の結果をどう評価しますか。

     シルバさん 私はCOPで示された前進を高く評価しているものの、その決定は常に遅く、実行にも時間がかかることを心配しています。一般にCOPでの決定は、産業革命前からの地球上の気温上昇を2度未満に抑えるために必要とされる基準であり、重大性、緊急性を伴うものです。しかし大多数の国々の政府は、形式的で官僚主義的なやり方で気候変動条約を扱い続けています。温暖化を防止する財政資源の確保のためにともかく行動に移さなければなりません。

    大統領選挙の候補者討論会で演説するマリナ・シルバさん=2018年7月4日、ブラジリアでレオ・カブラル撮影

     ――ブラジルは19年のCOP25の自国招致を返上し、チリでの開催が決まりました。ボルソナロ新大統領は「ブラジルのトランプ」と呼ばれ、トランプ米大統領と同様に地球温暖化対策に後ろ向きで、パリ協定からも脱退するのではないかと懸念されています。ブラジルは1992年に気候変動枠組み条約などを採択した地球サミットをリオデジャネイロで開催して以来、世界の環境問題解決への取り組みをリードしてきましたが、ブラジルの環境政策は今後どうなるのでしょうか。

     シルバさん ボルソナロ氏が優先的に進めると思われることは、過去40年間の各政権下でブラジルに培われてきた社会環境的なガバナンスの構造を最大限に弱体化させることです。ボルソナロ氏と彼の政治的支持基盤は環境問題に関しては、かなりゆがんで誤った見方を持っています。彼らは、環境保護や持続可能な開発を擁護することは、イデオロギー的に左翼の政策課題であり、国の発展をまひさせ、他国の利益を助長することを望むことだと見なしています。さらに、気候変動の問題を認めず、その問題に向き合うことを拒むことで、環境破壊や地球温暖化によって被害をこうむる人々を見放しているのです。

     ――地球温暖化対策を進める上で、二酸化炭素を吸収し酸素を排出する熱帯雨林の役割は重要ですが、ボルソナロ大統領はアマゾンの開発を積極的に進める方針を示しています。今後のアマゾンの熱帯雨林の保護について、またそこに住む先住民族の権利の保護について、どのようにお考えですか。

     シルバさん アマゾンは、ブラジルだけでなく地球にとってきわめて重要な社会環境的な財産です。アマゾンは生物多様性や天然資源の巨大な貯蔵庫であることに加えて、ブラジル経済の活力となる世界最大の淡水保全区域の一つであります。アマゾンは毎日200億トンの水蒸気を大気中に放出しています。それは雨となって貯水池にたまり、ブラジルの大半の電力を供給し、農業大国ブラジルのかんがい用水をまかなっています。

     ここ数十年で行われたアマゾンの経済開発によって、すでにアマゾン熱帯雨林の19%が減少しましたが、国の発展を示すような社会的な指標を生み出すことはありませんでした。森林伐採は国の発展をもたらさないのです。アマゾンの森林は社会文化的な多様性を保全する知恵と技術と知性を駆使して活用されるべきです。

     さらに、アマゾンの先住民コミュニティーや保護活動の支援、そして森林の持続的な利用のための国家戦略がなければ、アマゾン熱帯雨林の保護を保証することは不可能です。そこに住む人々の権利を認めることだけでなく、彼らの土地を開発によって横領する文化を止め、住民の収入と永続的な雇用を生む活力のある森林経済をつくる必要があります。


    マリナ・シルバ 1958年、ブラジルのアマゾン奥地でゴム採取労働者の貧困家庭に生まれた。16歳で初めて読み書きを学ぶ。重金属中毒に苦しみながら、大卒後に政治運動や環境保護活動に取り組み、36歳で同国史上最年少の上院議員に就任。環境相時代は伐採率を6割削減し、数多くの国際的環境賞を受賞した。2015年10月に毎日新聞社の招きで初来日。「持続可能な開発と環境保護」をテーマに上智大学で開かれたシンポジウムで講演し、広島市の原爆資料館などを訪問した。

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