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忘れられた高齢者

知的障害のある彼や彼女たちはどんな時代を、どう生きてきたのか。障害者の高齢化問題にいち早く取り組んできた「のぞみの園」を舞台に報告する。

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忘れられた高齢者

/4 「ともえちゃん」と一緒

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史子さんは、いつも「ともえちゃん」と一緒だ
史子さんは、いつも「ともえちゃん」と一緒だ

 寮の食堂には、午後の光が差し込んでいた。窓側の席から史子さん(89)=仮名=が記者に手招きし、両手で抱いた女の子の人形を見るよう促した。「ともえちゃん」。自ら付けた人形の名前を何度か繰り返す。赤ちゃんを紹介するお母さんのように、それはそれはうれしそうな顔で。

 知的障害者で認知症の彼女が群馬県高崎市の国立重度知的障害者総合施設「のぞみの園」に入所したのは、1971年12月。<優生保護法による手術をしている>と、当時の文書にある。旧優生保護法(48~96年)による強制不妊手術や人工妊娠中絶。史子さんもまた、その当事者だった。

 日本が2014年に批准した国連障害者権利条約は、障害がある人も、ない人と同様、本人意思が尊重されるべきだと定めている。一方、史子さんの人生には、障害者に意思があること自体顧みられてこなかった歴史が、凝縮されている。

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