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社説

北朝鮮の人権問題 決議は交渉の道具なのか

 欧州連合(EU)とともに11年連続で国連人権理事会に提出してきた北朝鮮非難決議案を、今年は提出しないと政府が表明した。2月末のトランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の会談や、拉致問題などを取り巻く情勢を総合的に検討した結果だと説明する。

     この会談で、トランプ氏は金氏に拉致問題を提起したという。また、拉致被害者の家族会などは最近、金氏に対するメッセージを初めてまとめた。「被害者全員の即時帰国が実現するなら日朝国交正常化に反対しない」という内容である。

     非難決議では、拉致問題を含む人権侵害を「人道に対する罪」と指弾し、北朝鮮が人権状況を改善するよう訴えてきた。日朝交渉を本格的に再開させるために方針転換するという論理は分かりにくい。

     対話を実現しようと柔軟姿勢を示すことは、外交的にはありうる。北朝鮮は人権問題で批判されることに強く反発しており、提出見送りを前向きに受け止める可能性もある。

     しかし、北朝鮮の人権状況は何ら改善していない。日本は人権理事会をはじめ、国連総会などの場でも同様の決議採択を主導し、議論をリードしてきた責任がある。

     本来、人権問題は拉致問題を含む包括的な概念であるはずだ。今回の日本の対応は、拉致問題という個別の課題と人権問題一般をバーターするかのように見えてしまう。これまでの決議は、外交交渉の道具としかとらえていなかったと国際社会から見られても仕方があるまい。

     トランプ氏は、歴代の米政権と比べて人権問題への関心が低い。日本も足並みをそろえるようでは、人権問題を軽視しても構わないという誤ったメッセージとなりかねない。

     北朝鮮高官は15日、非核化交渉の中断を示唆しつつ、トランプ氏本人への批判は避けた。このため、トランプ氏との関係が良好な安倍晋三首相に北朝鮮が接近してくるとの見方もあるが、安易な期待は禁物だ。

     北朝鮮は国営メディアで、米朝会談が不調に終わった責任を日本に押し付けたり、歴史問題での対応を迫ったりして対日非難を強めている。

     成果を焦り、原則を譲るようでは相手に足元を見られるだけではないかと懸念する。

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