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社説

キトラ古墳壁画が国宝に 広く愛される環境作りを

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 奈良県明日香村のキトラ古墳(7世紀末~8世紀初め)の極彩色壁画が国宝に指定される見通しとなった。文化審議会が文部科学相に答申した。

     壁画は1983年に発見された。石室の東西南北に青龍(せいりゅう)、白虎(びゃっこ)、朱雀(すざく)、玄武(げんぶ)の四神図(しじんず)、天井に東アジア最古例の天文図が描かれている。「飛鳥美人」で知られる同村の高松塚古墳の国宝壁画と並び称され、古代絵画史を知る極めて重要な史料だ。

     飛鳥の輝きを守るために、国内の古墳壁画では前例のない試みが行われた。下地のしっくいが浮き上がるなど壁画の劣化が進んだため、2004年から6年あまりかけて壁面をはぎ取り外部施設に移し、16年に修復・保存作業を終えた。

     古墳と壁画は不可分だとして、現地保存を求める声もあった。しかし、はぎ取りを選択したのは、現地で修復していた高松塚古墳壁画が文化庁の不手際で大きく損傷した失敗例が大きく影響した。

     キトラ古墳壁画のはぎ取り作業は、日本の伝統的な表具技術も応用され、民間の文化財修復会社も技術面でサポートした。当代の英知を結集して、壁画を損なわないよう最善を尽くしたことは評価できる。

     文化庁は、はぎ取りは暫定措置で、現地に戻す可能性を探り続けていくとしているが、現状では困難だろう。今後、同様の壁画が見つかった場合にどうするのか。人材育成や技術の蓄積など、2例からくむべきことを大いに生かして、現地保存を目指す努力が求められる。

     あらためて保存科学がクローズアップされることになった。壁画の適切な保存方法について、さらに検討していくことも必要だ。

     国宝となり、保護が強化される。一方でどう広く見せるかの試金石にもなる。キトラは現在、年4回、約1カ月間ずつ公開されている。来年度末に修復終了予定の高松塚も、公開施設について検討中という。

     文化財保護法に、国宝は「世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるもの」とある。国民共有の宝を還元し、目に触れるようにすることが大切だ。

     文化財は愛されてこそ、守られる。考古学ファン以外にもアピールしていくことを忘れてはならない。

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