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余録

江戸時代には村役人や町役人を入れ札…

 江戸時代には村役人や町役人を入れ札、つまり選挙で選ぶ地域も多かった。投じられた入れ札が残っている例もあり、たとえば寛文年間に行われた甲府のある町の長人(としより)(名主(なぬし))選びは無記名投票だった▲「三右衛門より外に長人ハ無御座(ござなく)候(そうろう)、何事も三右衛門殿御(ご)尤(もっとも)ニ候」は三右衛門という人を熱心に推す入れ札だが、むろん名前だけの札と効力は同じだ。札の用紙もまちまちで、複数の候補を記した札や輪番制を提案したものもあった▲暮らしにかかわる身近な役人選びで、投票者がそれぞれ自由に意見を記しているのがおもしろい。「地方自治は民主主義の学校」は戦後広まった言葉だが、江戸時代のご先祖は誰に習うこともなく「自治」の作法を身につけたようだ▲北海道、大阪など全国11道府県の知事選がきょう告示されるのを皮切りに、第19回統一地方選が幕を開ける。前半の道府県知事選や政令市長選、同議会選は4月7日投開票。後半の市区長や町村長、同議会選は同21日に投開票となる▲「亥年(いどし)選挙」とは統一選が参院選と重なる12年に1度の選挙イヤーのことで、選挙結果の国政への影響も大きい。ただ今や国政がどうあれ、地域の未来は住民自身が真剣に考えないと暮らしの存続すら難しくなる人口減少時代である▲記録の残る江戸時代の河内(かわち)地方の村の入れ札では女性や土地を持たぬ農民を含む有権者の95%が投票した。そんなご先祖も励ましてくれようか。地域の明日がかかった住民の“自治力”が試される1カ月である。

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