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街中華、期待の星。ヤングパワーの「啓ちゃん」——サニーデイ・サービス田中貴とRockなRamen(GetNavi web)

情報提供:GetNavi web

ラーメン好きなミュージシャンとして知られる、サニーデイ・サービスのベーシスト、田中 貴さん。年間600杯以上を食べ歩く目・鼻・舌をもって、注目するラーメン店の味や店主に「Rock」を見出していくのが、この「RockなRamen」連載だ。

 

これまで登場したのは「麺家うえだ」「無鉄砲」「らぁ麺屋 飯田商店」「ラーメン 凪」「かしわぎ」「九段 斑鳩 市ヶ谷本店」と強者ばかり。

「麺家うえだ」https://getnavi.jp/cuisine/192377/

「無鉄砲」https://getnavi.jp/cuisine/201349/

「らぁ麺屋 飯田商店」https://getnavi.jp/cuisine/216349/

「ラーメン 凪」https://getnavi.jp/cuisine/275387/

「かしわぎ」https://getnavi.jp/cuisine/297607/

「斑鳩」https://getnavi.jp/cuisine/330440/

 

続く第7回は、荻窪にある「中華屋 啓ちゃん」。いわゆる“街中華”にカテゴライズされる店だ。ラーメンは王道から、タンメンにあんかけ系など幅広い。さらにチャーハンや定食系のご飯ものに加え、つまみも充実。ラーメンやつけ麺などに特化した“ラーメン店”ではないが、ヘタな店を凌駕するラーメンのウマさと、秘めた「Rock」魂を持っている。

 

【プロフィール】

田中 貴

サニーデイ・サービスのベーシスト。年間600杯以上を食べ歩くラーメン好きとしても知られ、TVや雑誌などでそのマニアぶりを発揮することも多い。バンドも精力的に活動し、2018年は『the CITY』『FUCK YOU音頭』『DANCE TO THE POPCORN CITY』『the SEA』『サニーデイ・サービス BEST 1995-2018』『Christmas of Love』とリリースを連発。今年はアルバム制作に専念し、並行してサポートなどの活動も。
直近では3月22~24日に「サナギ新宿」で開催される「SAVE THE ENERGY PROJECT in 新宿」にて、スネオヘアー、ワタナベイビー、新井仁による日替わりスペシャルライブをプロデュース。ほかにトークショー出演や、「ラーメン凪」×田中貴のスペシャルラーメンの販売などを行う。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000042962.html

 

街中華のウマさは鍋振りの技術で決まる

田中さんのグルメ愛も、ラーメンだけではない。カツライス(とんかつがのったご当地洋食)など、幅広くアンテナを張り巡らせている。街中華だって言わずもがなだ。そのなかで出合った一軒が「中華屋 啓ちゃん」である。

 

「啓ちゃんこと幸田 啓店主は、中野富士見町の老舗『尚(なお)ちゃんラーメン』出身。尚ちゃんは、以前は朝まで営業してたこともあって、十数年前からスタジオ帰りによく行ってましたね。啓ちゃんとは面識はなかったんですが、尚ちゃん出身の人が独立したという情報を聞いて、すぐさま食べに行きました。しかも2011年の創業時は25歳。その若さで、ラーメン専門店じゃない大衆的な中華料理屋さんを開くというセンスに心惹かれました」(田中さん)

 

同店はメニューが豊富ということで、今回はご飯ものを含めてやや多めに紹介する。最初にオーダーしたのは、名物のひとつ「木耳玉子」をのせたラーメン。すると幸田さんはすぐさま、中華鍋と対峙して“戦闘モード”に。そう、同時に数種の料理を手際よく作る必要がある街中華は、時間との闘いなのだ。

↑幸田さん。パワフルかつスピーディな動きで鍋をふるう
↑幸田さん。パワフルかつスピーディな動きで鍋をふるう

 

↑具はキクラゲ、卵、豚肉、玉ネギ。味付けはオイスターソースと醤油に、中華スープ、豆板醤のほか、隠し味に砂糖も使って甘みを演出する
↑具はキクラゲ、卵、豚肉、玉ネギ。味付けはオイスターソースと醤油に、中華スープ、豆板醤のほか、隠し味に砂糖も使って甘みを演出する

 

「尚ちゃんといえば『木耳肉定食』が名物なんです。中華屋さんにはよくあるメニューなんだけど、それが人気って珍しいですよね。でも確かにウマくて、僕も尚ちゃんではよく頼んでました。そのラーメン版は、啓ちゃんオリジナル。しかも去年メニュー化されたから、実は食べるのは初めてなんです」(田中さん)

↑「木耳玉子麺」900円。ふんわりと仕上げ、片栗粉でとろみをつけるのも特徴。ベースとなるのは醤油味の「ラーメン」(500円で提供されている)だ。ちなみに「木耳玉子」は650円、定食になると800円
↑「木耳玉子麺」900円。ふんわりと仕上げ、片栗粉でとろみをつけるのも特徴。ベースとなるのは醤油味の「ラーメン」(500円で提供されている)だ。ちなみに「木耳玉子」は650円、定食になると800円

 

「尚ちゃんはご飯ものに定評があるんですが、啓ちゃんは麺類も高レベル。それはスープのウマさが料理すべてのベースを支えているから。しかもこのキクラゲ玉子、想像以上にラーメンと合う!」(田中さん)

↑荻窪の老舗ラーメン店御用達の、南阿佐ヶ谷「小幡製麺」の中細ストレート麺がマッチ。通常で150gだ。以前は尚ちゃんと一緒の製麺所だったが、そこがなくなったタイミングで近場の「小幡製麺」に。そのため、いまは麺のタッチも少々異なる
↑荻窪の老舗ラーメン店御用達の、南阿佐ヶ谷「小幡製麺」の中細ストレート麺がマッチ。通常で150gだ。以前は尚ちゃんと一緒の製麺所だったが、そこがなくなったタイミングで近場の「小幡製麺」に。そのため、いまは麺のタッチも少々異なる

 

専門店を出すレベルの激ウマカレーも存在

次は「木耳玉子麺」同様に新しめで、人気も浮上しているという「カレーラーメン」を注文。そもそも、同店の「カレーライス」(700円/半カレーは400円)は自家製スパイスから仕込まれる渾身の逸品。しかも、実は店舗の2階は「Bar Soar」という系列店で、昼は「カレー屋3時まで。」というカレー店を二毛作営業していた(現在の日中は「中華屋 啓ちゃん」の予備の客席として活用)。それだけの自信作なのである。

↑カレーのベースは鶏ガラや豚のゲンコツなどから作る中華スープで、肉はミンチのキーマタイプ。数種のスパイスをブレンドし、隠し味に紅生姜の汁、カルピスの原液、コーヒー、リンゴなどが加わる。フルーティかつ複雑味のあるおいしさだ
↑カレーのベースは鶏ガラや豚のゲンコツなどから作る中華スープで、肉はミンチのキーマタイプ。数種のスパイスをブレンドし、隠し味に紅生姜の汁、カルピスの原液、コーヒー、リンゴなどが加わる。フルーティかつ複雑味のあるおいしさだ

 

↑「カレーラーメン」850円。アクセントとして、モヤシや茹で玉子がのる。基本的にはベースの醤油ラーメンにカレーをかけるスタイルだが、食べ進めるうちに混ざり合い、味が変化していくところも面白い
↑「カレーラーメン」850円。アクセントとして、モヤシや茹で玉子がのる。基本的にはベースの醤油ラーメンにカレーをかけるスタイルだが、食べ進めるうちに混ざり合い、味が変化していくところも面白い

 

「中華屋さんのスープはラーメン専門店と違い、あらゆる料理のベースにも使うためシンプルにできています。なのでオーソドックスなラーメンよりも、炒め物やあんかけなど中華鍋を使った麺料理を頼むのがベスト。素材への火の通し具合や味付けなど、そこに店主それぞれの技術と個性が出るんです」(田中さん)

 

パンチがあってクセになる絶品パワー中華

鍋振りの真骨頂といえばチャーハンだ。店の実力が出やすく、街中華の顔ともいえるこちらも作ってもらった。

↑「チャーハン」700円。肩ロースのチャーシューに、卵、ネギ、ナルトなどが入る王道の内容だ。「半チャーハン」は400円
↑「チャーハン」700円。肩ロースのチャーシューに、卵、ネギ、ナルトなどが入る王道の内容だ。「半チャーハン」は400円

 

醤油ベースで、ラードのコクや甘味があふれるストロングスタイル。ご飯は硬めに炊かれているためパラっとしていて、紅生姜がスッキリとしたアクセントを演出する。通常で400g強、大盛は+100円で700g近くとなるボリューム感も素晴らしい。

 

「チャーシューが多め、味付けもしっかりでパンチがあります。なんなら晩酌のつまみにもなります。街中華はちょっと飲めるのも魅力ですからね」(田中さん)

 

続いて、中華丼をアレンジした独創性の高い「レバー辛煮丼」と、食堂系のメニューとして「生姜焼き定食」もオーダー。肉だけではなく野菜がしっかり食べられるところもうれしい。しかも、これらのご飯ものをはじめ汁物以外はテイクアウトができる。営業時間に中休みはない。ふり幅の広さや使い勝手のよさもあり、頼もしい存在だ。

↑「レバー辛煮丼」850円。途中までの味付けは「木耳玉子」と一緒で、豆板醤などで辛くしている。プリっとした豚のレバーとシャキっとした野菜、食感のメリハリも絶品
↑「レバー辛煮丼」850円。途中までの味付けは「木耳玉子」と一緒で、豆板醤などで辛くしている。プリっとした豚のレバーとシャキっとした野菜、食感のメリハリも絶品

 

↑「生姜焼き定食」800円。豚バラ肉が約200gとたっぷりで、千切りキャベツとマヨネーズが好アクセント。単品を650円で頼めば、最高の酒のアテへと早変わり
↑「生姜焼き定食」800円。豚バラ肉が約200gとたっぷりで、千切りキャベツとマヨネーズが好アクセント。単品を650円で頼めば、最高の酒のアテへと早変わり

 

「啓ちゃんの魅力は、しっかりした濃いめの味付け。名付けるなら『パワー中華』ですかね。学生時代に通った、青春の味を思い出します。若い大将がやってるんだから、こうこなくっちゃって感じ。最近は、昔から続く中華屋さんの味に郷愁を感じるという人もいるが、熟練のおっちゃん店主も、昔は若さ全開で『腹一杯食ってけよー』とガッツリした料理を出していたはず。本来の街中華は枯れた味じゃなく、こういうエネルギッシュな味なんだと思います」(田中さん)

 

ともに歳を重ね、味の変化を分かち合える幸せ

安うまガッツリグルメの原風景といえる街中華は、しばしばメディアで取り上げられる存在である。だが、町工場と同じように後継者不足を抱えているのも事実。理由はいくつか挙げられるが、早い、安い、うまい、多いという魅力を支える重労働が大きな要因だ。しかも、メニューの豊富さや酒のラインナップも求められる。だからいまのご時世、若き店主が新たに立ち上げることは稀なのだ。

↑「鍋を1日中ふりまくって、腕は大丈夫なの?」という田中さんに、「慣れてるんで腕は全然大丈夫です」と涼しげな幸田さん
↑「鍋を1日中ふりまくって、腕は大丈夫なの?」という田中さんに、「慣れてるんで腕は全然大丈夫です」と涼しげな幸田さん

 

「大衆的な中華料理屋というジャンルは、大手チェーン店が一気に増えてます。でき合いのタレやスープを使った味と、手作りの啓ちゃんの味は比べるまでもないですが、なによりチェーン店は圧倒的な安さで勝負してきますからね。そんなご時世のなか、新たに個人で街の中華屋さんを始めるケースって、実際にはほとんど存在しないんじゃないかな。通し営業で、料理を作るのは啓ちゃん一人。店構えや、店内の壁に貼られたメニューなど、昔っぽさを狙ったわけでは一切なく、自然にそうなっている。誰もやってないことをやるという意気込みより、本当に好きだからやってるという気持ちが伝わってきます。これこそが本物のROCKではないかと」(田中さん)

 

確かに、当の本人はそこまでメラメラと燃えている様子はない。街中華の道に進んだ理由を聞くと、シンプルな答えが返ってきた。

 

「17歳のころから、バイトを含めてピザに和食などいろんな飲食店で働いたんですけど、やるなら自分が一番好きなお店で料理を覚えたいなって。それが高校のときによく行ってた『尚ちゃんラーメン』です。20歳から働いて、独立させてもらった形ですね」(幸田さん)

 

オーナーでありながら、調理担当でもある幸田さん。一部の仕込みは営業中にまかなうものの、中休みがないので朝から晩まで店にいるというのは驚きだ。ちなみに「Bar Soar」は中学時代の後輩に任せるなど、知人同士で助け合いながらうまく切り盛りしている。

↑幸田さんの地元の友人でもある、スタッフの竹村皓太さん。協力しながら店を盛り立てる
↑幸田さんの地元の友人でもある、スタッフの竹村皓太さん。協力しながら店を盛り立てる

 

「ラーメン店はどんどん新しくオープンしますけど、新しく中華屋さんができることってあまりないんで。それが逆にいいかなーと思った部分もあります。そういえば昨年、尚ちゃん時代の同僚が『中華屋 櫂ちゃん』を新高円寺にオープンしたんですよ。ぜひ行ってみてください!」(幸田さん)

 

このように、若い店主の営む街中華が近所にあるのは素晴らしいことだと田中さんは言う。

 

「いまでこそパワー中華の啓ちゃんですが、もしかしたら年を追うごとにやさしい味になっていくかもしれません。でもそれって、啓ちゃんとともに歳を重ね、味の変化を分かち合えるってこと。何十年に渡って付き合える中華屋さんが近所にあるって、すごく羨ましいですよ」(田中さん)

 

しばしば、荻窪はラーメンの街といわれる。レジェンド的存在の「丸長」に「春木屋」など名店ぞろいだからだ。また、カレーなら「吉田カレー」に「トマト」と新旧の人気店が入りまじり、餃子なら超個性派の「蔓餃苑」、高級中華なら「北京遊膳」など、そもそも美食のエリアである。街中華の老舗にも「中華徳大」を筆頭に実力派がズラリ。何十年も経てば、そんな風に「中華屋 啓ちゃん」も大御所の仲間入りを果たすだろう。なぜなら、正統派街中華の危機が叫ばれるなかで現れた、稀代のロックスターなのだから。

 

【店舗情報】

中華屋 啓ちゃん

・住所:東京都杉並区天沼3-31-35
・電話番号:03-3392-0805
・営業時間:火~土11:30~23:00、日11:30~22:00
・定休日:月
・アクセス:JRほか「荻窪駅」徒歩5分

 

撮影/三木匡宏

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