安倍政権の中枢から、日銀は「2%」の物価目標にこだわるべきではない、との発言が出ている。2012年末の政権交代前から、2%にこだわってきたのは、他ならぬ安倍晋三首相とその周辺だった。今になって何を言うのだろう。
以下は、麻生太郎副総理兼財務相が最近、記者会見で述べたものだ。 「(2%の物価目標に)こだわっているのは、新聞記者と日銀とそういうことに詳しい人(だけ)」「こだわりすぎるとおかしくなる」
安倍氏が「経済学の大家」と称し、内閣官房参与に起用した米エール大の浜田宏一名誉教授もロイター通信のインタビューで、「(2%目標は)絶対に必要というものではない」と述べている。日本の物価目標は3%でもいいと主張していた人だ。
時計の針を、政権交代のあった12年12月に戻そう。自民党は2%の目標導入を選挙公約に掲げた。「達成に向け、日銀法の改正も視野に、政府・日銀の連携強化の仕組みを作り、大胆な金融緩和を行う」とした。
当時、自民党内で検討されていた日銀法改正には、物価目標が達成されない場合、政府が日銀総裁を解任できるようにすることなどが含まれていた。日銀にあからさまな圧力をかけることで、日銀との共同文書発表にこぎつけ、2%の目標をのませたのである。
安倍政権に任命されて黒田東彦氏が日銀総裁に就任すると、「2年」という達成期限も明示した。
それから6年が経過したが、2%達成のメドは全く立っていない。
2%の未達成を問題視するのではない。最大の問題は、安倍政権が2%にこだわった結果、日銀が出口のない異常な金融緩和を始め、抜けられずにいること。そして日本の金融や財政が将来にわたって大きくゆがめられてしまったこと、である。
日銀の異次元緩和で物価上昇を果たすのが「アベノミクス第一の矢」だったことを忘れたわけではないだろう。麻生氏の言う通り、誰も2%にこだわっていないのなら、政権は誤りを認め、要因を分析し、国民にわかりやすく説明するのが筋だ。
責任を日銀になすりつけ、雇用情勢を大きく改善させたアベノミクスは大成功だった、などと議論をすり替えることは、許されない。