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モリシの熊本通信

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被災者の声なき声を伝え続ける /佐賀

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 来月で熊本地震から丸3年。そのタイミングで記事を何本か世に出そうと考え、最近時間を見つけては、以前取材した被災地を歩いている。

 先日訪れた、震源地に近い熊本県益城町のある地区。発災間もないころから、取材のため足しげく通った場所だ。

 発災直後は、あたり一面ががれきの山だった。発災から1年たつと、それが更地となった。いずれも、不思議と「音」を感じなかったことをよく覚えている。生活する人も、走る車も、ない。人々の日常生活が失われた場所は、「無音」になるということを、その時初めて知った。

 今回改めて歩いてみると、更地はほとんどなくなっていた。自宅や店舗が再建され、「音」も感じることができた。

 その足で、同町内の仮設団地も、何カ所か訪問した。どの団地も外を歩く人は少なかった。毎日新聞の報道によると、同町内の建設型仮設住宅の入居率(2月末現在)は57・4%(896世帯)にまで減少。入居者が再建した自宅に引っ越すなどして、生活再建が進んでいることを表している。

 他方、熊本地震で自宅を失い、再建困難な被災者の恒久的住まいとなる災害公営住宅(復興住宅)の整備も進む。建設型仮設住宅や、民間賃貸住宅を市町村が借り上げる「みなし仮設住宅」で暮らす人々にとって、新たな生活がスタートするわけだ。

 しかしながら、筆者の周囲では、新たな負担を不安がる声も聞かれる。災害公営住宅では、仮設住宅や持ち家で必要なかった家賃が、月1万5000~5万4000円程度発生するのだ。年金生活を送る高齢者などにとって、これは重い負担となる。

 東日本大震災では、低所得世帯を対象に国が家賃を補助した。しかし、熊本地震において、現時点で国は補助する意向を示していない。

 熊本市内のみなし仮設で一人暮らしを送る男性は、災害公営住宅の家賃について「周辺相場からすると安いのは理解しているが、今の経済状態ではそれでも支払いが苦しい」と胸の内を吐露した。災害公営住宅への転居は、復興を進める上での大きな一歩だ。一方で、低所得世帯にとっては、経済面での困難が待ち受けている可能性もある。今後も、被災者の声なき声を伝え続けたい。


 ■人物略歴

田中森士(たなか・しんじ)

 マーケティング会社「クマベイス」(熊本市)代表取締役、ライター。熊本県立高常勤講師、全国紙記者を経て古里の熊本市で起業した。熊本地震後は、復興支援活動に携わりながら、執筆やイベントを通し、被災地の現状を伝えている。モリシは愛称。熊本市南区在住。

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