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沖縄の提案を首相拒否 この機会をなぜ生かさぬ

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 膠着(こうちゃく)状態にある辺野古問題の局面を転換すべきときだ。沖縄県の玉城デニー知事が打開策を探ろうとしているのに、安倍晋三首相はなぜこの機会を生かそうとしないのか。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設をめぐり、知事は首相との会談で、埋め立ての土砂投入中止と1カ月程度の話し合いを求めた。

 知事はその際、最高裁に上告した工事差し止め訴訟の取り下げを表明するとともに、県が準備していた別の訴訟についても政府の回答次第で見送る譲歩の姿勢を示した。

 しかし、政府は週明けに辺野古崎南側の新たな埋め立て区画で土砂投入を始める方針を崩さなかった。岩屋毅防衛相はその理由を「ここで問題が再び漂流すると普天間の固定化にしかならない」と説明した。

 だが今や「辺野古が唯一の選択肢」と固執する政府の姿勢こそが固定化を招く要因になっていないか。

 辺野古崎の北東側に広大な軟弱地盤が見つかった。埋め立て工事の設計変更には県の承認が必要であり、県側と話し合わなければならない課題がたくさんあるはずだ。

 防衛省が国会に提出した報告書によると地盤改良には最短でも3年8カ月かかる。水深90メートルまで続く軟弱地盤を、70メートルが限度とされる砂の杭(くい)を打ち込む工法で改良できるのか。大量の砂利をどう調達するのか。合理的な説明はなされていない。

 政府は移設容認の知事に代わるのを待つつもりかもしれないが、そうであればなおさら県民の理解を得る努力が必要だろう。2回の知事選と県民投票で示された「辺野古ノー」の民意に聞く耳を持たない政府の姿勢は県民の反発を強めるだけだ。

 仮に容認派の知事が生まれても、それから地盤改良を行い、さらに埋め立てや施設整備に数年かかることを考えれば10年超もあり得る。

 北東側のめどが立たないまま南側にいくら土砂を投入しても工事は完了しない。政府の対応は辺野古の工事を続けることが自己目的化しているといわれても仕方あるまい。

 話し合いの提案を拒否された県は結局、国を相手取った新たな行政訴訟を福岡高裁那覇支部に起こした。

 沖縄の基地問題をめぐって国と県が法廷闘争を繰り返す現状が政治の無策を物語っている。

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