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社説

芸能人の薬物事犯と作品 議論のない自粛は疑問だ

 芸能人の犯罪や不祥事が発覚した際に、出演作品をどう扱うか。この機に、立ち止まって考えたい。

     麻薬取締法違反(使用)容疑で逮捕されたミュージシャンで俳優のピエール瀧(たき)容疑者の出演映画やテレビ番組の、撮り直しや放送中止が相次いでいる。音楽CDは回収となり、デジタル配信も停止された。

     作品に罪はないとして、自粛は過剰反応だとの声も上がる。名脇役として幅広く活躍していただけに、関係作品が多いことも影響している。

     そのなかで東映は、映画「麻雀放浪記2020」を出演場面をカットせずに、予定通り上映することを発表した。

     「映画は意思を持った観客が来場する。テレビでの放映やCMとは性質が違う」というのが主な理由だ。是非はあろうが、安易な自粛の流れに一石を投じたことは評価できる。

     一方、NHKは瀧容疑者がレギュラー出演中の大河ドラマ「いだてん」で代役を立て、有料の番組配信サービスで過去の出演作の配信も停止した。NHKの国内番組基準とも照らし合わせ、「受信料で成り立っており、反社会的行為は容認できない」と説明する。映画とテレビというメディアの違いもあるだろう。

     言うまでもなく、薬物の乱用は犯罪だ。自身に有害なだけでなく、社会をむしばむ。

     芸能人による薬物事犯は、毎回大きく報道されるが、後を絶たない。スポーツ選手同様、社会的影響力の大きい存在であり、波紋を呼ぶのは仕方がない。

     自粛という形で、薬物犯罪に対する厳しい姿勢を表すことは理解できる。また、視聴者からの批判やスポンサーなどに配慮し、リスクを回避するためのやむを得ない措置という面もあるだろう。

     しかし、議論もなく、マニュアル化されたように一律に排除することには疑問がある。

     映画やテレビドラマ、音楽作品はさまざまなクリエーターの手をへて創造された表現物だ。投げかけられた問いを社会と共に考えることで、成熟した文化が育つはずだ。

     正解はないだろうが、罪状や状況といった個々の事案と、作品を切り分けて評価する社会的な度量の大きさがあっていいのではないか。

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