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社説

ゴラン高原の主権 米国が再び乱す国際秩序

 トランプ米大統領がまた国際秩序をかき乱す方針を打ち出した。イスラエルが1967年の第3次中東戦争でシリアから奪い、占領を続けるゴラン高原について、イスラエルの主権を認めると表明したのである。

     米政権は、国際社会が認めていないのに、エルサレムをイスラエルの首都と認定し、昨年、大使館を移した。それに次ぐ背信と言えよう。

     ゴラン高原はシリア南西部に位置し、イスラエルの水源のガリラヤ湖を見下ろす丘陵にある軍事戦略上の要衝だ。

     国連安保理は67年の占領の際、イスラエルに撤退と返還を求め、81年にイスラエルが併合した時も、それが無効だと決議した。武力による領土の拡張は認められないことが国際社会の原則だからだ。

     ところがトランプ氏はそれを踏みにじろうとしている。

     主権承認の背景には、ゴラン高原周辺での軍事的緊張がある。米国とイスラエルが敵視するイラン系武装勢力は昨年以来、シリア側に展開し、高原周辺でイスラエル軍と交戦するようになった。このためイスラエルのネタニヤフ首相は米国に承認の働きかけを強めていたという。

     特筆すべきは、トランプ氏と蜜月関係にあるネタニヤフ氏が、それを外交成果として4月9日の総選挙へ向けてアピールしようとしていることだ。同氏は汚職で起訴される見通しで、与党は劣勢と見られていた。

     またトランプ氏も、来年に再選のかかる大統領選挙を控え、主要支持層で親イスラエルのキリスト教福音派の支持を固めたい思惑のようだ。イスラエル寄りの政策が票獲得につながるとの計算だろう。

     しかし内政上の都合から国連決議に背くというのは、もってのほかだ。第二次大戦後に発効した国連憲章2条4項は、武力によって他国の領土保全を脅かしてはならない、と定めている。武力による領土獲得を認めることは、戦後の国際秩序を否定することにほかならない。

     トランプ氏の論理を当てはめればロシアによるウクライナのクリミア編入も容認されてしまう。

     米国の主権承認に対し、シリアはもちろんイランやアラブ諸国は反発している。高原周辺での緊張が高まることを危惧する。

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