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SUNDAY LIBRARY

上原 隆・評『ニックス』『拳銃使いの娘』

母が残してくれた言葉と母が語らなかった思い

◆『ニックス』ネイサン・ヒル/著 佐々田雅子/訳(早川書房/税別3500円)

◆『拳銃使いの娘』ジョーダン・ハーパー/著 鈴木恵/訳(早川書房/税別1700円)

 「あなたのお母さんはあなたのこと『タカシさん』と呼ぶの?」。作家のSさんがきいた。一瞬なぜそんなことをきくのかがわからず、「はあ」と答えた。去年上梓(じょうし)した拙著についてSさんが書評を書いてくれて、礼状を出したところ、食事をしようということになった。その席での会話だ。本の中に、私が両親を介護する話があり、「タカシさん、私、不安で不安で」という母の言葉を書いた。Sさんはそこに違和感をもったのだろう。いわれてみれば、いつごろから母は「タカシさん」というようになったのだろう。昔は「タカシ」とか「タカシちゃん」と呼ばれていたような気がする。帰り道、そんなことを考えていて、ふと思い当たることがあった。私は『「普通の人」の哲学』という最初の本で、人を呼ぶときに「くん」とか「さん」と使い分けるのをやめて、全員「さん」と呼ぶことにすると書いた。母は私の本を全部読んでくれていたはずだから……。

 ネイサン・ヒル『ニックス』(佐々田雅子訳)は母と息子の話だ。知事に石を投げつけた女性が逮捕される。…

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