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文芸時評

3月 日本語の未来 すぐ向こうの「換字」かな混じり文=田中和生

古川日出男氏

 古川日出男の短篇(たんぺん)「焚書都市譚」(『すばる』)は、二〇二〇年の東京オリンピック開催が決まった二〇一三年を曲がり角に、日本語からカタカナが消えてしまったもう一つの現代日本をSF的に想像する。カタカナが不要になるのは、政府が導入した「換字システム」で、カタカナ表記の外来語はすべてアルファベットで表記されるからだ。来年に予定されている東京オリンピックで、海外からの観客を英語で「おもてなし」しなければならないとしたら、たしかにその方が合理的かもしれないと思わせるところが面白い。

 語り手の「私」はそれを機に文筆生活を止(や)めた小説家で、そのことが日本語にもたらした亀裂について考察する。ハンドルがsteering wheelで、サングラスはsunglassesと「換字」されるその世界で、観光客を歓迎できる若者とそれに慣れない老人は、たがいに異邦人となる。曖昧さがもたらす日本語の詩情が失われていくと感じる「私」は、末尾でこの世界に対してカタカナという文字を知らせるテロを計画…

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