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平成という時代

平成最後の年を迎えた。平成は、グローバル化やインターネットの普及を背景に社会が大きく変化し、価値観の多様化が進んだ時代だった。さまざまな変化を追うとともに、その先にある次代をどう描いていくべきか考えたい。

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第4部 伝える/5 不戦の自衛隊、存在感 元陸上幕僚長・冨澤暉さん(81)

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元陸上幕僚長の冨澤暉さん=藤井太郎撮影
元陸上幕僚長の冨澤暉さん=藤井太郎撮影

冨澤暉(ひかる)さん(81)

 「ずっと曇り空だったのが、そのとき急に晴れてきてね。たまたま2人で開け放たれた窓から外を見ていたときのことでした……」。元陸上幕僚長の冨澤暉さん(81)は四半世紀前の情景をはっきり覚えている。そのときの言葉は鮮烈だった。

 1994年10月30日、陸上自衛隊朝霞訓練場(東京都練馬区など)で行われた観閲式。村山富市氏(95)が社会党の首相として初めて出席した。社会党は自民党と連立を組む際に結党以来の政策を大転換。村山氏は「自衛隊は合憲」と表明した。冨澤さんが記憶するのは、式のあとに開催された陸自主催の昼食会直前の控室でのこと。窓の外は淡い光に満ちていた。隣にいた首相は問わず語りにこうつぶやいた。「きょうのわしの言葉を一番喜んでいるのは、社会党の仲間たちなんじゃ」

 自衛隊は創設当初から、憲法違反として批判されてきた。社会党はその急先鋒(せんぽう)だった。

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