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「医師と患者の関係を変えたい」 SNSで情報発信する医師が市民講座を開催

左から、堀向健太さん、山本健人さん、大塚篤司さん=東京都港区の「看護roo!」オフィスで2019年2月10日、西田佐保子撮影

 ツイッターやインスタグラムなどのSNSを中心に医療情報を発信する医師、山本健人さん(ツイッターアカウント名は「外科医けいゆう」)、堀向健太さん(同「ほむほむ@アレルギー専門医」)、大塚篤司さん(同「大塚篤司【医師・医学博士】」)の3人が企画した市民講座「第2回 SNSが作る新たな医療のカタチ in TOKYO」が先月、看護師のコミュニティーサイト「看護roo!」のオフィス(東京都港区)で開催された。イベントはSNSやブログで告知し、30~40代を中心に約110人が参加。誤った医療情報への対応などについて、活発に意見交換した。【西田佐保子】

ツイッターで出会った医師が市民講座を企画した理由

 医師を「近寄りがたい存在」だと思っている患者は多い。「両者に立ちはだかる壁を取り除きたい」という共通の思いを持つ医師3人がツイッターでつながり、患者と交流する新たな市民講座「SNSから始まる新たな医療のカタチ~新世代のインタラクティブセミナー」が、18年12月に大阪で開催された。参加費は無料で、会場費は医師3人が負担し、立ち見が出るほどの大盛況だった。「次は東京でも」とのリクエストを受けて開いたのが今回の講座で、会場は3人の活動に共感した「看護roo!」が無料提供した。

 前半のプレゼンテーションで外科医の山本さんは、「医師は患者さんが何が分からないかを理解できないことが多いので、常にその点について意識的に考えている」とし、「解熱剤で熱は下げない方がいい?」「腫瘍マーカーでがんは見つかる?」「インフルエンザは検査でわかる?」など、比較的、医療リテラシーの高い人でも誤解しがちなトピックスを取り上げ、解説した。

 皮膚科医の大塚さんは、ほくろのがん「メラノーマ(黒色腫)」を解説。さらに、がん患者の家族や友人が抱える悩み「がんになった大切な人への接し方」について、「僕の答えは簡単です。特別なことはせず、それまでの関係の延長線上で接する。お見舞いに行っても、普段通りに話しましょう。病気については本人が一番よく考えているので、その思いを尊重することが大切です」とアドバイスした。

 小児科医でアレルギー専門医の堀向さんは、小児のアトピー性皮膚炎やぜんそくの検査法や治療法を、最新臨床データを交え解説。「現在、乳児のアトピー性皮膚炎の発症率が低下しています。早期から保湿剤を使用する新生児が増えたのが、その要因の一つと言われています。このような情報を、より多くの人に届けられればうれしい」と締めくくった。

“正しい知識”の前に必要なコミュニケーション

子連れの参加者も多く、アットホームな雰囲気の会場=東京都港区の「看護roo!」オフィスで2019年2月10日、西田佐保子撮影

 後半のトークセッションでは、会場からさまざまな質問が出た。「間違った医療情報を信じている人たちに、科学的根拠のある医療情報を信じてもらうにはどうすればいいのか」も、その一つだ。

 大塚さんは、標準治療(科学的根拠がある、現時点で最良の治療)だけで病気をコントロールできない患者を一例にあげて答えた。「これらの患者さんにとって『標準治療は効かない』は思い込みではありません。彼らの気持ちをくみ取れず、耳を貸さない医師の態度にも問題があります。親身になって話を聞いてくれたのが、(科学的根拠のない治療を高額で提供する)民間療法の医師だったのかもしれません」。その上で、大塚さんは「患者さんが訴えたいのは『病気を治してほしい』です。そのことを理解してから、間違った発言をする人も僕は否定しません。信頼関係を築いてはじめて、患者さんが話を聞いてくれる。正しい知識を話す前に、コミュニケーションが大事です」と話した。

 山本さんは、「こういう話をしてほしいから、3人でこの講座をやりたかった」と話し、続けた。「発信方法が上手で、説得力があるからこそ、患者さんはその情報を信じます。一方的に『それはおかしい』と否定するのは効果的ではありません。こちらも質の高いコンテンツを作って、上手に情報を発信する。患者さんに科学的根拠のある情報を選んでもらう可能性を高めるしかない。今日もこの場で、私は多くの人に信頼してもらえる情報発信の技術を磨いています」

 堀向さんは「2人の答えが完璧なので話をしなくてもいいかもしれませんが」と前置きした上で、「僕は『正しい知識』ではなく、『根拠のある知識』と言うことにしています。『正しさ』は人によっては異なるからです。日々の仕事でいっぱいいっぱいな中、僕たちが情報発信しているのは、自分の持っている知識を分かりやすく提示して、皆さんに選んでもらうためです。『ニセ医学と対決しよう』などとは思っていません。小さな種を植えて、正しい知識がゆっくり広がり育っていくことを期待しています」と話した。

 「『正しい』と『正しい』がぶつかるとあつれきが起こります。だから今日、正しい知識に固執せず、皆さんと情報を共有して一緒に考える場ができたことに感謝しています」。イベントの最後に、3人を代表して堀向さんは来場者に語りかけた。

 今夏には、札幌でも市民講座の開催を予定しており、無料で自由に参加できる会として継続する意向だ。なお、当日の模様や感想は、「#SNS医療のカタチ」で参加者がツイッターで発信している。

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