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社説

新しい元号は「令和」 ページをめくるのは国民

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 新元号が令和に決まった。

 安倍晋三首相は記者会見で「広く国民に受け入れられ、日本人の生活に深く根ざしていくことを願っている」と述べた。

 元号はこれまで「五経」の「書経」や「易経」など、中国の古典が出典だった。しかし今回は初めて、日本最古の和歌集である「万葉集」が典拠となった。

 首相は、万葉集が日本の悠久の歴史や薫り高い文化、四季の美しい自然を象徴しているとして「日本の国柄はしっかりと次の時代に引き継いでいくべきだと考えている」とも語った。

 保守的な安倍カラーのにじみ出る選考だったのだろう。ただし、新しい元号に意味づけをしていくのは、あくまで国民である。

選定過程を詳細に記せ

 憲政史上、天皇の退位に伴う初の改元だった。内閣は主権者の委託を受けて、元号に責任を負う。このため決定までの過程は国民も共有できるものでなければならない。

 政府は数人の学者から出された案から複数案に絞り込み、有識者による「元号に関する懇談会」と衆参両院の正副議長から意見を聞いたうえで全閣僚で協議し、改元の政令を閣議決定した。

 中でも有識者懇談会は、国民の意見を反映するという位置づけである。平成への改元時は昭和天皇の逝去当日に、懇談会以降の手続きがあわただしく進められ、発表までの時間は約1時間30分だった。このうち懇談会は実質約20分で終了した。

 今回は退位日と即位日が確定していたため、時間的な余裕があり、相当の時間をかけて議論ができる状況だった。懇談会の時間は前回より約20分伸び、閣議などを含めた全体で約40分長くなったものの、発表時間はあらかじめ決められていた。

 政府は懇談会のメンバーを知名度の高い作家や学者らに委嘱し、国民に開かれた選定だと印象づけようとしたとみられるが、結論ありきの印象を残した。

 選定過程について後に国民が検証できるようにするためには、経過が正確に記録され、一定期間後に公開されなければならない。

 ところが、平成改元時には、詳細な経過が公文書として残されていない可能性があるという。政府が恣意(しい)的に情報の取捨選択をすることは国民主権の原則に反する。

 大正、昭和への改元でも記録は重視された。ともに即位儀礼などと合わせて国がまとめた「大礼記録」には、元号案を絞り込む前の段階から詳細な経過や考案者が記録され、後に公開されている。大正の大礼記録には「後世の参考にしてもらうためだ」と記されている。

 まして今は情報公開法や公文書管理法がある時代である。関連する文書をできる限り早い時期に公開することが求められる。

 安倍首相は決定の3日前、皇太子さまと面会し、複数の元号案について説明したとみられている。意見を求めていれば、天皇が「国政に関する権能を有しない」とする憲法4条に触れるおそれがある。この経過も、情報公開が欠かせない。

時代共有する「文化」に

 新元号の扱いをめぐって保守派の間には政府をけん制する動きがあった。天皇と元号は一体であるとの理由から、新元号の公布手続きは新天皇自らが行うべきだと主張した。

 しかし、閣議決定から1カ月近くも公布を見送るような特別扱いは、やはり憲法4条に触れる可能性があり、退けられた。

 今回は、どんな元号になるのかインターネット上などで自由に予想が飛び交ったのが特徴だ。

 昭和の終わりには昭和天皇の病状悪化が日々伝えられ、社会は自粛ムードに包まれた。当時のような抑圧的な空気から解放されたことは、国民生活にとって望ましい。

 こうした明るい雰囲気は、陛下の退位を大半の国民が支持したことも影響しているだろう。

 かつての元号は権力者が時間を支配する意味を持っていた。しかし象徴天皇制の現代においては、元号は一つの「文化」であろう。

 時代を区切る「句読点」や「しおり」ともいわれる。それは、どんな時代だったのかという認識を国民が共有することにつながる。

 平成を振り返りつつ、令和の時代をどう築いていくのか。国民自身が考えながら、時代のページをめくっていくことになる。

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