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早くも万葉集ブーム 「令和」考案者、中西氏編集版を講談社が増刷決定

新元号発表を受け、書店に特設された「万葉集」関連本のコーナー。一部の本は既に売り切れていた=東京都新宿区新宿で2019年4月2日午後4時46分、宮本明登撮影

 新元号「令和」の出典となった日本最古の歌集「万葉集」が早くもブームになっている。書店では関連本が売り切れ、出版社も増刷を決めた。古典になじみのない若者が増える中、近年はヒット映画の下地になるなど一部で存在が見直されつつあった。専門家は「万葉集は困難な時代にはやってきた。閉塞(へいそく)感が漂う今、多くの人に触れてほしい」と話す。

文庫本、完売 「コーナー作ろうにも在庫なし」

 紀伊国屋書店新宿本店(東京都新宿区)は2日、急きょ取り寄せた万葉集の文庫本をレジ前のワゴンで売り始めた。客が代わる代わる手に取り、夕方には完売した巻もあった。担当者は「改元で、ここまで本に注目が集まるとは」と驚き「今後は日本の古典全体にスポットを当てた企画も考えたい」と話す。

 神保町ブックセンター(千代田区)は平成論や天皇論のコーナーを既に設けていたが、万葉集関連本を上段に目立つように並べた。神保町の別の書店は「コーナーを作りたいがもう在庫がない」という。

新元号発表を受け、書店内に設置された「万葉集」関連本コーナー=東京都千代田区神田神保町で2019年4月2日午後4時6分、宮本明登撮影

 新元号発表を受け、講談社は「令和」を考案した中西進・大阪女子大名誉教授が編集した「万葉集 全訳注原文付(一)~(四)」と「万葉集事典」(いずれも講談社文庫)の5冊計1万1400部の増刷を決めた。広報部は「40年以上前の本で普段はあまり動きはないが、アマゾンの全体のランキングで上位に入るなど好調」と話す。筑摩書房は中西名誉教授の「万葉の秀歌」(ちくま学芸文庫)を5000部増刷する。

 岩波書店も「万葉集(一)(二)」(岩波文庫、佐竹昭広ほか校注)の増刷を決めた。営業PR担当は「『令和』の掲載箇所がある(二)の方が売れ行きが良いが、(一)もつられて動き、増刷することになった」と語った。【山口敦雄、大原一城】

「『梅花の宴』はわが国最初の大和言葉による詩宴」大岡信氏が意義強調

 万葉集について詩人、評論家の大岡信(1931~2017年)は生前、「その後の日本の詩歌がたどってきた紆余(うよ)曲折の歴史の、根本的に重要なところが、ほとんどすべて、萌芽(ほうが)状態ですでに存在している」(「私の万葉集」講談社文芸文庫)と高い評価を与えていた。

 新元号の典拠となった大伴旅人(おおとものたびと)主催の「梅花の宴」についても「わが国最初の大和言葉による詩宴」であり「歌合(うたあわせ)や連歌・俳諧連歌(連句)の先駆形態」として「その後の日本詩歌史全体を貫く大動脈となった」(同)と意義を強調している。

ある女性歌人は「『梅花の宴』の歌には万葉集の編さん者とされる家持(やかもち)(旅人の子)をはじめ、文芸にも秀でた大伴一族が衰退に向かう予兆を思わせる歌も含まれる」と話す。

 新元号発表後、家持が国守として5年間在任した富山県高岡市の市万葉歴史館には問い合わせが相次ぐ。新谷秀夫学芸課長は「平成2(90)年の開館以来、一番のパニック状態。大学で教えていた時も、万葉集を学んでいないという学生がたくさんいた。愛好家も高齢化し、存在感はジリ貧だった」と話す。「最近では映画『君の名は。』の下地になるなど万葉集は日本文化の源流。新元号が、読み方すら分からない歌もあるなど謎の多い万葉の世界に親しむきっかけになれば」と期待する。

 辰巳正明・国学院大名誉教授(国文学)は「戦や災害など困難な状況の時に、喜怒哀楽が詰まった万葉集がはやってきた。武士社会になった鎌倉時代や戦後の復興期も万葉集に影響を受けて歌を詠む人が急増した」と語る。

 「日本の精神や文化は古典が支えてきた。弱者を狙う犯罪が後を絶たず、政府も経済成長ばかり追って閉塞感が漂う今こそ万葉集に触れる時。漫画やおもしろく書いた解説書でもいい」と辰巳さん。「出典となった序文の文脈や背景に目を向けてほしい。そこでは『令』の字は戒めや使役の意味では使われていない」と話している。【井上卓弥、堀智行、千脇康平】

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