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社説

冤罪生む捜査風土 自白の絶対視は許されぬ

 容疑者の自白を絶対視するような捜査風土を変えなければならない。

     殺人罪で服役した元受刑者が求めた再審を認める司法判断が相次いでいる。捜査の見立てに沿った自白が強いられたり誘導されたりしたことが冤罪(えんざい)を招いた。

     1985年に熊本県松橋(まつばせ)町(現宇城市)で起きた殺人事件で、再審無罪が確定した宮田浩喜さんは「うその自白をさせられた」と述べていた。事件では、凶器に巻き、犯行後に燃やされたはずのシャツを検察が長年所持していたことが判明した。適切な証拠開示が行われていれば有罪にならなかったはずだ。

     2003年に滋賀県東近江市の病院で入院患者が人工呼吸器を外されて死亡したとされた事件でも、元看護助手の西山美香さんの再審開始が確定した。この事件は、殺人ではなく自然死だった疑いが強く、無罪の公算が大きい。西山さんは軽度の知的障害があり、他者に迎合しやすかったといい、ストーリーありきで自白が引き出されたのではないか。

     再審無罪が確定した足利事件でも自白が強要された。自白は「証拠の王様」と呼ばれ、裁判の中で重視される。そこに虚偽の供述を生む余地が残る。捜査機関は自白を得れば、証拠物全体をそれに合わせて評価してしまい、客観的な証拠収集がおろそかになりがちだ。この国の捜査機関の自白偏重体質は否定し難い。

     刑事訴訟法が改正され、取り調べの録音・録画制度が6月から義務化される。ただし、裁判員裁判対象事件などに限られ、刑事事件全体の約3%に過ぎない。

     カルロス・ゴーン日産自動車前会長の事件では、取り調べへの弁護人立ち会いの必要性が投げかけられた。西山さんの弁護側も求めている。

     欧米の主要国では容疑者の権利として定着している。取調室の密室性を取り除く制度改革は、正面から議論すべきテーマだ。

     捜査機関が収集した証拠の開示についても改善しなければならない。

     捜査で得られた証拠は公共物だ。刑訴法が改正され、検察が全証拠リストを弁護側に開示することが義務付けられた。だが、再審については法に規定がない。検察の裁量や裁判所の姿勢で開示が左右されるのは不合理であり、改める必要がある。

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