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「普通に普通のことがこなせるようになりたい」 大人の発達障害に切実な声

毎日新聞に寄せられたアンケート回答の一部=2019年4月4日16時11分、塩田彩撮影

 毎日新聞が1~2月に全国の大人の発達障害者を対象に実施したアンケートで、回答した4割超が「うつ病を発症している」と明らかにした。厚生労働省によると、大人の発達障害と併存症に関する全国調査はなく、実態は分かっていない。専門家は「特性が理解されないことで、いじめや虐待の被害に遭い、生きにくさが増している」と指摘。当事者からは、対人関係の悩みや周囲の無理解を訴える声が多く寄せられた。

 「就職活動の暗黙のルールが理解できず、周囲が濃紺のスーツの中、一人グレーや茶色といった『おかしな色』のスーツを着て面接に挑み、理由も分からないまま内定を得ることができなかった。仕事で明確な主語がない指示を確認しようとしたら『それくらい自分で考えろ』と言われ怒られた。発達障害であることを職場に報告したら事実上の退職勧奨を受けた」(40代男性)

 「複数の人の会話を処理できない。何度も聞き返したりして相手をうんざりさせて嫌われてしまう。3人以上では頭が混乱してしまい、まともに会話についていけない。常に極度に疲れており、まともに働くこともできない」(40代女性)

 「ミスが多い、忘れ物が多い、片付けが苦手などの特性があるが、コミュニケーション能力に問題はないため、診断を受けたと伝えても『誰にでもある』『努力すれば変われる』と言われ理解してもらえない。上司からは『みんなができることをあなただけ特別扱いすることはできない』と言われた」(40代女性)

 「感覚過敏でエアコンの温度や加湿器の稼働について家庭でも職場でも言い争いになる。周りが気にしないような臭いや音でも具合が悪くなり、『ワガママ、文句ばかり言う人』と言われてしまう」(30代女性)

 「保育園ではき出した給食を食べるよう強要された。小学生の時に食べられない給食を食べるよう強要され極度の偏食になった。保育園から就職後までいじめや嫌がらせを受けていた。いろいろな人からいじめられすぎて今も人の視線が怖く、人混みでのサングラスが欠かせない」(30代男性)

 「自分に指示されている声に気づかず、『耳が聞こえないのか』と叱責された。数字の記憶など簡単な指示でもすぐに忘れてしまい、何度も確認しに戻って嫌がられる。感覚過敏で肌に触れても痛くないものが少なく、食費を削ってでもストレスを受けにくい服や日用品を試さないと家の中で過ごすのも一苦労。発達障害は、複合的な感覚過敏、鈍麻で、日常で受けるストレスが健常者より多く、認知機能や協調運動機能も低い障害であることを知ってほしい」(30代女性)

 「人にはわからない不安を抱えていたり、メモやタイマーを活用してなんとか毎日をやり過ごしていたりすることについて、本当の意味で共感してくれる人がいない、そんなに頑張っているのかと認めてくれる人がいない。だれでもあることよ。大丈夫、みんな一緒だから。そう言われることでさらにつらくなる。だけどみんなは、円形脱毛になったりめまいになったり、吐き気や胃痛に襲われたりしないでしょ?」「生きることに、必死です。なんでこんなにうまくいかないのか。目に見えない何かと闘いながらもがいています。普通になりたい。普通に普通のことがこなせるようになりたい」(30代女性)

「診断可能な医療機関を増やして」

 アンケートは「発達障害当事者協会」(東京都新宿区、新=しん=孝彦代表)を通じて発達障害者支援に携わる全国62団体に配布した。インターネットでも受け付け、20歳以上の計1072人から回答を得た。発達障害の診断を受けた回答者は862人。このうち、うつ病と診断された人は393人(45・5%)と4割を超えた。また、「死にたいと思ったことがある」と答えた人は68・5%に上り、22・9%が自殺未遂の、29・3%が自傷行為の経験があると答えた。また、女性回答者のうち17・1%が、何らかの性暴力の被害に遭ったことがあると回答した。

 診断を受けた年齢は20代が最も多く35・4%。次いで30代26・5%、40代が19・8%で、全体の8割超が成人後に診断を受けていた。2005年の発達障害者支援法の施行以降、発達障害の概念が広まり、子どもの頃に診断を受ける人が増加した。一方、すでに成人した発達障害者の中には、支援法施行以前に子ども時代を過ごし、大人になるまで自分が発達障害だと知らずに育った人が多いことがうかがえる。

 発達障害の診断を受けたものの、障害者手帳を取得していない人は33%だった。また、未診断・グレーゾーンと回答した人でも、発達障害以外に何らかの精神疾患を抱えている人は計57・1%に上った。当事者協会運営委員の嘉津山具子(かつやま・ともこ)さんは「大都市圏では、大人の発達障害を診断できる医療機関に予約が殺到する状況もある。グレーゾーンや未診断の人たちは日常的に困難を抱えているのに、障害者雇用の対象にならず福祉サービスも受けられない。適切に診断できる医療機関を増やし、グレーゾーンの人も含めて生きづらさを抱える当事者への支援が必要だ」と話している。【塩田彩】

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