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「つくりおき」ブームは80年代から続いていた!?“ワーママ”が生み出したトレンドの正体[平成食ブーム総ざらい!Vol.8]

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約30年続いた平成は、2019年の4月に終わりを迎えます。平成にあったさまざまな食のブームや事件を、昔懐かしいものから直近のものまで、作家・生活史研究家の阿古真理さん独自の視点で語っていただきます。

「つくりおき」の前の「常備菜」ブーム

一人暮らしをしていた1990年代、私は毎日同じようなものばかり食べていた。料理しても食べるのは自分だけだし、代わりに作ってくれる人もいない。一人で食材を買いに行って作って食べて片づける。そのくり返しが単調でめんどくさかったのだ。

基本の献立はご飯と味噌汁、焼き魚、副菜。副菜はいわゆる常備菜で、たいていニンジン、シイタケ、油揚げが入ったヒジキ煮か、ヒジキを切り干し大根に替えただけの、切り干し大根の煮物だった。まとめて作っておいて、なくなるまで食卓に載せる。簡単だけど単調な食生活のためだろう。私はあの頃、体力がなくてすぐ疲れていた。ただ、常備菜のありがたみはよくわかった。

さて、これまでに常備菜のレシピがブームになったことは2回ある。一度目は1980年代で、そのときはフリージングが注目された。働く主婦が増え始めた時代で、「家のことをちゃんとするなら働いてもいいよ」と夫から言われた女性たちは、週末に常備菜を作るか下ごしらえをした素材を冷凍庫に入れておき、平日の負担を減らそうと試みていた。

冷蔵保存の常備菜が中心の二度目のブームが来た2010年代は、子育て期の共働き女性が増えた時代である。「家のことちゃんとするなら」と言われる女性は少なくなっただろうが、彼女たち自身が、昭和の共働き主婦と違ってグルメになっている。

1980年代はファミレスが増えて外食は日常化しつつあったが、まだ今のようにバラエティ豊かな選択肢があったわけではなかった。しかし、平成に大人になった今の現役世代は、インド料理やイタリア料理などさまざまな外国料理も食べ慣れている。デパ地下やスーパーなどで、バラエティ豊かな総菜を買って帰ることもできる。ふつうの人がふつうにグルメな時代になったのだ。だから、常備菜も同じものばかりでは飽きてしまう。そして、つくりおきブームが起こったのである。

5年前のつくりおきブームから現在

つくりおき料理のレシピ本が書店の棚にずらりと並ぶきっかけは、2011年に刊行され、2014年の第一回料理レシピ本大賞in Japanの料理部門大賞を受賞した『常備菜』(飛田和緒、主婦と生活社)だろう。表紙に「作って冷蔵庫にストックしておけば ごはんに お弁当に すぐおいしいおかず109」と銘打ってある。

紹介されているのは、「ひき肉のソース炒め」「いわしのしょうが梅煮」「かぼちゃのペースト」「ゴーヤのしょうゆ漬け」「豆のマリネサラダ」など幅広い。中にある◯◯漬けやマリネは、日本やヨーロッパの主婦たちの間で受け継がれてきた常備菜である。いつの時代も主婦は忙しく、だからこそ常備菜を使い回す工夫もしてきた。その知恵に今のトレンドを含めた提案を行っている。

料理レシピ本大賞in Japanではその後も、つくりおきブームを反映した受賞作が続いた。2015年には料理部門に『決定版!朝つめるだけで簡単!作りおきのラクうま弁当350』(平岡淳子、ナツメ社)が入賞。2016年は『つくおき』(nozomi、光文社)が料理部門大賞を受賞している。

つくりおきの流行は、やがて完成した料理ではなく、下ごしらえした肉を冷蔵しておくなどに移り、2018年頃にはあまり目立たなくなった。日持ちすることを前提とした常備菜とはいえ、つくりおきした料理は次第に味が落ちる。くり返し食べると飽きる。そうして、忙しい人を対象にしたレシピの人気の中心は、時短やスープなどへ移って今がある。

しかし私は思うのである。つくりおきレシピの流行は、忙しくて料理する余裕がない人が、それでも何とか手作り料理を食卓に載せたいと考えるからこそ生まれたものだ。外食することも総菜を買うことも簡単にできる時代に、たくさんの人が手作りをしようとがんばっている。それは頼もしいことではないだろうか。


阿古真理(あこ・まり)

Dac2a396eb6f2a4d1a2180992f7d52af ©坂田栄一郎 1968(昭和43)年、兵庫県生まれ。作家・生活史研究家。神戸女学院大学卒業。食や暮らし、女性の生き方などをテーマに執筆。著書に『昭和育ちのおいしい記憶』『昭和の洋食 平成のカフェ飯』『小林カツ代と栗原はるみ』『なぜ日本のフランスパンは世界一になったのか』『パクチーとアジア飯』など。

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