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米欧対立とNATO 存在意義は薄れていない

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 米国とカナダ、欧州諸国が加盟する世界最大の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)が、4月4日に創設から70年を迎えた。

 第二次世界大戦後の米ソ冷戦期に西側諸国を束ねる組織として1949年に発足した。加盟国への攻撃を全加盟国への攻撃とみなす集団的自衛の機能を持つ。

 ソ連崩壊後も存続したのは、自由な国際秩序を支え、世界の安定に寄与してきたからだろう。年内には北マケドニアが加わり加盟国は当初の12カ国から30カ国になる。

 だが、そのNATOにかつてない根深い溝が生じている。原因は同盟国を軽視するトランプ米大統領だ。

 トランプ氏はかねて「NATOは時代遅れ」と批判し、集団的自衛の履行も「公平な負担次第」と述べてきた。昨年は離脱さえ口にした。

 先週、会談したNATOのストルテンベルグ事務総長にも「米国だけが大きな負担をしているのは不公平だ」と不満をぶつけている。

 加盟国は今後5年で国防費の国内総生産(GDP)比2%以上を目指すが、達成できるのはすでに3%を超える米国を含め一部とみられる。

 問題はトランプ氏が同盟国の扱いを国防費の多寡で差別しようとしていることだ。共同防衛の理念に反し、結束力は弱まるだけだろう。

 軍事費だけが同盟の強さを測る物差しではない。冷戦後のNATOはむしろ価値観を共有する政治的な機能に重点を置いてきた。

 90年代の旧ユーゴスラビア軍事介入や2001年米同時多発テロ後のアフガニスタン治安維持は人道支援が目的で、地域安定に貢献した。

 14年のクリミア編入以降、ロシアは欧州にとって深刻な脅威になっている。これを機に欧州のNATO加盟国は国防費を増額させてきた。

 にもかかわらず、米国が損得だけで行動すれば、米国の欧州への影響力を後退させ、むしろロシアを勢いづかせる結果を招きかねない。

 加盟国のトルコはロシアから最新防空ミサイルシステムを導入する方針で、米国との亀裂を深めている。

 軍事力の強化に走るあまり、軍備拡大が連鎖し「新冷戦」を招くなら、世界は一段と不安定化する。

 NATOは米欧の外交力のてこでもある。その意義を再確認すべきだ。

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