「令和」の時代を展望する議論が盛んだが、「環境」はキーワードの一つになるだろう。何を今さらと言われそうだ。公害の多発などにより1960年代から深刻化した環境問題には「昭和」のイメージさえある。そして温暖化などの地球環境問題は「平成」を通じ、ホットな議題だった。しかし、刊行中の「加藤尚武著作集」(全15巻、未来社)の第7巻『環境倫理学』を読み、環境はこれからが正念場のテーマだと痛感した。加藤さんは生命倫理や環境倫理の研究を主導してきた哲学者で、鳥取環境大の初代学長も務めた。
この本は世界情勢の転変を如実に映し出す。収録された『環境倫理学のすすめ』が出たのは東西冷戦が終結したばかりの91年。「地球環境をどうやって破壊から救うか」が「世界の基本問題」として浮上した背景に、イデオロギー対立の終わりがあった。続編の『新・環境倫理学のすすめ』(2005年)は、温室効果ガス削減を先進国に義務づけた京都議定書(97年採択)の発効直後、国際的な認識が深まるとともに解決の困難さが明ら…
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