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日本文化をハザマで考える

第3回 日本からヒットドラマが出ない不思議

西遊記の登場人物たち(写真提供・Shizhao)

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 1978年の日本テレビのドラマ「西遊記」(海外では「Monkey〈モンキー〉」と名付けられた)が英国で放映されたのは79年であった。以後、熱狂的ファンは後を絶たない。「モンキー」はオーストラリアではさらにヒットし、メキシコからアルゼンチンまでラテンアメリカでも広く放映された。

     日本のドラマが世界をほぼ征服することなど、テレビの歴史においてはそれまでになかったことだった。どうしてあれ以来、二度とそうしたことが起きていないのであろうか?

     「モンキー」は言うまでもなく、中国の古典「西遊記」から取られたもので、玄奘三蔵(三蔵法師)が貴重な経典を入手しようと中国からインドまで旅する話である。三蔵法師はその途中で邪悪な支配者や、悪魔や盗賊などに出くわすが、さまざまな従者たち――雲に乗って空を飛ぶ孫悟空や、大食と欲望の豚をイメージした怪物・猪八戒、そして、気難しく、以前は人間を食べていた、水の妖怪・沙悟浄らによって守られる。

    堺正章さん=1983年撮影

     「モンキー」の出演者たちは素晴らしかった。活気にあふれる堺正章氏が孫悟空で、日本を代表する役者、西田敏行氏が猪八戒、岸部シロー氏が沙悟浄だった。三蔵法師は、若くて美しい女優、夏目雅子氏が演じていた。彼女は悲劇的にも85年に27歳の若さで白血病で亡くなってしまったが、今なおファンは多い。

    夏目雅子さん=1982年撮影

     このドラマは中国古典風ではなく全く日本的で、英BBCがこれを放送した時、吹き替えの英語は愉快で聞きやすい口語を使っている。まじめすぎない吹き替えになった。

     私や私と同世代の英国人にとってこのドラマは、中国や日本の文化に対する、一生続く興味を育むことになった。

     ただ、驚くことに、73年放送の日本テレビ「水滸伝」(英語タイトルはWater Margin)と「モンキー」は、テレビの歴史においては、ほんの一時的なものだった。あれ以降、日本のテレビドラマにおいて、「西遊記」や「水滸伝」に匹敵するほど世界的人気を博したシリーズは生まれていない。世界には日本のテレビドラマを歓迎しそうなチャンネルが数多くあるにもかかわらず、である。

     確かに、「西遊記」は日本でも中国でも何回もリメークされた。フジテレビが13年前に、SMAPのスターだった香取慎吾氏を孫悟空に起用してリメークを作った時(堺正章氏も脇役として登場した)、オリジナルの「モンキー」に対するノスタルジーがあまりに強かったので、欧米の新聞では、このリメークが特集記事になったほどである。

     最近では、おそらくアニメの世界と宮崎駿氏の映画が、世界中の若者たちの心に日本に対する興味を植え付けているのだろう。

     しかしながら、私は信じたい。「モンキー」のような、世界的古典を題材にした、人目を引き、活気にあふれる日本のテレビドラマがもう一度現れて、真に国際的ヒットになってくれるだろうことを。

    @DamianFlanagan

    ダミアン・フラナガン

    ダミアン・フラナガン(Damian Flanagan) 1969年英国生まれ。作家・評論家。ケンブリッジ大在学中の89~90年、東京と京都に留学。93~99年に神戸大で研究活動。日本文学の修士課程、博士課程を経て、2000年に博士号取得。現在、兵庫県西宮市とマンチェスターに住まいを持って著作活動している。著書に「世界文学のスーパースター夏目漱石」。

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