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余録

「彼女(前任者)は多分月に…

 「彼女(前任者)は多分月に75ドルはもらっていたはずです。それなのに私は15ドル……誰かがその差額をものにしているに違いありません」。こう米国人教師との露骨な差別待遇を怒っているのは津田梅子(つだ・うめこ)である▲津田塾大を創設する梅子が米国から帰り、米人宣教師の学校で教えた時である。若き梅子は日本人生徒や教師の粗末な待遇と宣教師のぜいたくな生活の落差に憤った。自分が5000円札の肖像になる未来はもちろん夢にも知らない▲「彼が月給80円なら、せめてそれ以上に……」。東大医学部卒はすぐ月給200円の大病院の院長になれた当時、同70円の内務省衛生局に入った北里柴三郎(きたさと・しばさぶろう)の局長への要望である。彼とは4歳年下で福島の医学校卒の後藤新平(ごとう・しんぺい)だった▲ペスト菌発見の偉業をなす柴三郎は学費を自分で稼いだ苦学生で、当時30歳だった。収入より社会貢献を選んだ彼も俸給の「格下」には抵抗したが、結局は規定を受け入れた。1000円札になる偉人にもお金をめぐるドラマはある▲一方、お金との縁の深さでは群を抜く実業家の渋沢栄一(しぶさわ・えいいち)である。明治新政府の大蔵省で近代貨幣制度発足にかかわり、実業界に転じて日本資本主義の父といわれた彼は、現在の1万円札の“主”、福沢諭吉(ふくざわ・ゆきち)と将棋を指したことがある▲諭吉がこの時「商売人にしては割合強い」と口の悪いところを見せると、栄一は「ヘボ学者にしては強い」と応じた。この2人の間の1万円札の代替わり、キャッシュレス時代にどんな様相を見せるのか。

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